「誰もが」輝く社会を創る「ヘラルボニー」の挑戦 知的障害のある"異彩作家"と新たな文化を創造

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パリのインキュベーション施設を拠点に、協業するファッションやアート関連企業を開拓するとともに、ヨーロッパで活動する異彩作家とのライセンス契約や新たな商品の開発を進める計画だ。

当たり前に障害のある人が存在する世界

「福祉×アート」の分野で岩手から世界へと広がりを見せるが、目指すのは視覚的なアートだけでなく、さまざまな分野で、世界に暮らす80億人の異彩が「ありのままに」存在できる社会。

松田文登さん
ヘラルボニーの将来像を語る松田文登さん(筆者撮影)

「音楽や食など日常のあらゆるところで障害のある人たちが当たり前にいる、そんな世界にしていくために、ヘラルボニーの持つディレクションの力で福祉を拡張していきたい」

崇弥さんが視察で赴いたオランダでは、障害のある人々が働くカフェチェーンが53もの店舗を構えていた。カフェはごくありふれたマンションの1階などにあり、人々の日常に溶け込んでいるように見えたという。

「障害のある人たちが働く店が街のインフラになっている状態を見て、弟は大きな刺激を受けたと言っていました。すぐには難しいかもしれませんが、日本でもそんな日常を創り出していきたいと思っています」

グローバルな展開の一方で、地元である岩手では、本社を置く盛岡市と包括連携協定を結び、まちづくりにも参画していくという。

ヘラルボニーのブランド力とアートの力で盛岡の街に人を呼び込むプロジェクトを構想中で、老舗百貨店内に構えていたショップを全面リニューアルし、発信拠点としての機能を強化していく計画だ。

川徳に構えたショップ
盛岡市で唯一の百貨店である川徳に構えたショップ(写真:ヘラルボニー)

岩手での活動を続けるのは、兄・翔太さんの存在があるから。「兄が暮らす岩手で活動することで、自分たちが事業を通じ、いったい誰を幸せにしたいのかを明確にし続けることができる。兄の幸せのため、岩手からまちづくりに挑戦していきます」

【写真】『ガイアの夜明け』で特集されるなど話題のヘラルボニー。その歩みがわかる写真の数々(10枚)
手塚 さや香 岩手在住ライター

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てづか さやか / Sayaka Tezuka

さいたま市出身。毎日新聞の記者として盛岡支局や学芸部で取材経験を積んだ後、東日本大震災からの復興の現場で働くため、岩手県釜石市に移住。復興支援員として活動し、2021年にフリーランスとして独立。一次産業や地方移住の分野を中心に取材・執筆しているほか、キャリアコンサルティングや地域おこし協力隊の支援活動も行っている。

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