《進化するノンアルコール飲料2/ワイン》試行錯誤で発見した日本茶で渋み
ノンアルコールの波は、ワインにもやってきた。
ブドウとワインの町、山梨県・勝沼で1877年、133年前からワイン造りに携わる「シャトー勝沼」。老舗ワインメーカーは「車の運転や病気、妊娠中、授乳中など何らかの理由でお酒を飲めない人にもワインの雰囲気を楽しんでもらうために」(シャトー勝沼・今村英香専務取締役)ノンアルコール“ワインテイスト”飲料「カツヌマグレープ」を開発した。10年3月に「ルージュ」(赤)を商品化、今年2月に「ブラン」(白)を拡充している。
開発の過程ではまず、ブドウ果汁を熟成させアルコールを生成、その後アルコール分を除去する製法でノンアルコールワインを目指した。だがこの製法ではワインの香りが損なわれ、飲料としてのおいしさもない。そこで開発途中で発想を転換し、アルコールを生成しない製法に切り替えた。
赤ワインの「渋み」をどうやって表現するか。「柿渋」「皮ごと絞ったミカン果汁」「ウーロン茶」「紅茶」「タンニン」などさまざまなものを試すがうまくいかない。1年半かかってようやく、「渋み成分として緑茶を活用する」ことにたどり着いた。
加えて、緑茶の分量や抽出温度、カベルネソーヴィニヨンほか4品種のブドウの組み合わせや分量、クランベリー果汁で「甘み」と「酸味」を補うなどのブレンド法が確定するまで、開発着手から足かけ3年の月日を要した。
畑で色づく前のブドウを「若ブドウ」と呼ぶ。白ワインのさわやかな「酸味」は、この「若ブドウ」で表現した。さらにブランにはアルコールの刺激の代わりに「香辛料」を加え、「レモン」で柑橘系の香りや酸味を付加した。「若ブドウの果汁は白ワインの風味に近い」という発見には、ブドウ畑を所有し、ブドウ栽培からワイン醸造までを行ってきた経験が生かされた。