大島優子は「箱根ショック」の小田急を救うか 火山活動の活発化が響き観光客が減少

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酒匂川を渡るMSE

小田急が映画に対して出した注文はただ1つ。「ロマンスカーをいっぱい映してください」――。

主人公が乗務するロマンスカーは「MSE(60000形)」という青い列車である。最近でこそ東京メトロの宣伝にも登場するほどの人気を誇るMSEだが、小田急を代表するロマンスカーといえば「VSE(50000形)」という白い列車。なぜVSEではなく、MSEが選ばれたのか。

「当社では、VSEとMSEの両方をご用意できますとお伝えしました」(CSR・広報部)。だが、結果的にはMSEを使って撮影されることになった。その理由は「監督がアテンダントのワゴン販売にこだわったから」(東京テアトル)。

VSEの車内販売はワゴン販売ではなく、アテンダントが1人1人に注文を聞いてからドリンクやお弁当を座席に届けてくれるというスタイル。いわば喫茶店のようなサービスなのだが、より一般的なワゴン販売のほうが映画にしっくりくると監督は判断したようだ。

小田急が描くベストシナリオ

大島さんは、撮影前に小田急の事務所で、さらに回送列車の中でもワゴンを押す練習をした。それだけでは物足りず、お忍びで箱根に向かうロマンスカーに乗車して、アテンダントの話し方や仕草を観察したという。

実際の撮影は、回送列車で1回と営業用車両を2両貸し切った状態で2往復した。「大島さんの演技はアテンダントそのもの」と小田急社員が舌を巻くほどの出来映えだった。

小田急は、箱根の不振を打ち消そうと、新たな観光の柱として大山(神奈川県)観光の活性化に力を入れている。地域と連携した取り組みをする一方、大山ケーブルカーもリニューアルし、10月に運行開始する予定だ。また、グループ会社の江ノ島電鉄が、鎌倉・江の島エリアの観光の足として奮闘している。

とはいえ、小田急といえば、やっぱり箱根である。幸いにも、箱根の火山活動は沈静化の方向にあり、8月24日には大涌谷の立ち入り禁止区域の一部で通行規制や避難指示が解除された。映画をきっかけに、箱根に観光客が戻ってくる。これこそ、小田急が描いているベストシナリオであることは間違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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