中国高速鉄道、急成長の影で「幽霊駅」出現の衝撃 開業後すぐ休止や完成後未使用の駅が各地に

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「幽霊駅」は利用者が極めて少ないことが理由だが、人口密集地であってもその実例がある。たとえば、山水画さながらの風景が楽しめることで日本でも知られる広西チワン族自治区桂林市の例を取り上げてみたい。

桂林には、旧市街近くに長い歴史のある桂林駅があるほか、市街地から離れた場所に桂林北駅や桂林西駅があり、さらに周辺の町に6つの駅が建設された。しかし、これらの駅のうち1つは、アクセスの悪さから利用者が1日200人以下にとどまり、開業からわずか4年で旅客業務を停止したという。

桂林は観光都市で、常に国内外からの訪問客も多い。駅前にそれなりの観光客向け施設でも作れば「駅閉鎖」という嘆かわしい結果にはならなかっただろう。世界にその風景が知られる桂林市でさえ、無計画な駅設置が問題となっているわけだ。

このほか、中国で最初の高速鉄道ルートとなった北京と天津を結ぶ路線にも、2008年の開業時にほぼ完成しているにもかかわらず一度も運用されていない駅がある。また、北京と黒竜江省ハルピンを結ぶルートの途上にある遼寧省瀋陽市の瀋陽西駅も、2018年12月に開業したが、わずか7カ月後に旅客営業を停止した。

多数の列車が行き交う幹線ルートでも、このような「幽霊駅」が存在しているのだ。

中国高速鉄道 一度も使われていない駅

鉄道の信頼性にも影響が

中国の鉄道駅といえば「どこも混雑している」という印象が強いかもしれない。こうした一昔前の在来線の混雑状況が影響を与えている可能性もある。地方自治体の幹部たちが「我が町にも高速鉄道駅を」と躍起になるのは、過去の鉄道のイメージとは異なる近代的な高速列車で大都市と繋がることによって不動産価格が上昇し、雇用も増えるといったバラ色の未来像を描けるからだろう。

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高速で通過する列車から見た駅。反対方向の列車が停車中だ(編集部撮影)

しかし、このような理想像が生む過大な予測に基づく立地選定や、需要を創出するための周辺インフラ整備が未計画のまま駅の建設をひたすら推し進めるような姿勢が「幽霊駅」の出現を招いているのは明らかだ。地方自治体が無計画に駅を誘致し建設した結果、住民たちの鉄道への信頼性までもが損なわれかねない事態にある。

中国は経済成長の象徴でもある高速鉄道の建設を止めることはできない状況にある。高速鉄道網の整備が始まった十数年前と比べ、中国経済の減速は鮮明だ。これ以上の「幽霊駅」の増加を防ぐためには、実態を顧みない過大な成長予測ではなく、経済性と実用性を重視した計画が求められるだろう。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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