東京、パリと「炎上五輪」が続いた"根深い問題" 選手や運営への批判や誹謗中傷が止まらない背景
3つ目のSNSプラットフォームの変化について考えてみたい。
2010~2012年にかけてアラブ世界で民主化運動が加速した。いわゆる「アラブの春」だが、FacebookをはじめとするSNSが若者を連携させ、運動の拡大を実現したとされている。
当時は「SNSは世界をよくする」と考えられていたし、Facebook創設者のマークザッカーバーグ氏もそうした発言を行っていた。ところが、次第にSNSプラットフォーム事業者も、不適切なSNSの投稿、活用に対して、以前ほど十分な管理、対応を行わなくなってきている。
記者が取材をせず、SNSやインターネットの投稿を拾って記事にして発信する「コタツ記事」は以前から問題だったが、取材がしづらくなったコロナ禍でさらにコタツ記事が乱造されるようになった。
「SNSでこうした声が出ている」という記事が呼び水となって、誹謗中傷に拍車をかける事態となっている。
“ソーシャリンピック”は取り戻せるのか?
誹謗中傷をなくし、応援し合い、励まし合い、みんなで盛り上がる“ソーシャリンピック”を復活させることはできるだろうか?
運営側が炎上の“火種”となるようなトラブルを起こさないようにすることは大切だが、それだけでは不十分だ。現状起きている誹謗中傷の多くは、投稿者のストレスや鬱憤がたまたま話題になっている五輪に向いているに過ぎない。実際、何もトラブルを起こしていなかった選手まで誹謗中傷されている。
IOC(国際オリンピック委員会)はAI(人工知能)を活用した監視を進めたり、選手村内に選手の心のケアを行うスペースを設置したりしている。
JOC(日本オリンピック委員会)も選手の誹謗中傷をやめるようにと声明を出したうえで、法的措置の可能性も示唆している。
誹謗中傷を受けた選手、メダリストを含む過去の代表選手、有識者など、多くの誹謗中傷を控えるように呼びかけている。
このような取り組みは重要なことであるし、継続的に続ける必要もあるのだが、それでは十分とは言いがたい。
誹謗中傷を行う人の多くは、何を言ってもやめないだろうし、投稿の数が膨大になると、監視や法的措置にしても限界がある。
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