日本「五輪で覇者」のスケボー、街から排除の明暗 「危ない」と禁止せず、まちづくりに生かすには
これは2017年当時、取り締まりの対象となっていたスケートボードの状況に憂いを感じたレオ・ヴァルスさんという1人のプロスケーターが立ち上がり、8年ほどで合法なものへと変貌を遂げたストーリーだ。
公益財団を作り、近隣住民と一般スケーター、プロスケーター、議員、ボルドー市、それぞれの利害を調整し、妥協点を見つけるためのメディエーション(対話・仲裁)を始めて事態は徐々に好転していった。
ポイントは「ポジティブなコミュニケーション」。例えば騒音苦情が入ったなら素直に認め、誠実な態度で対話を繰り返す。そしてどの場所なら騒音問題が起きないのか。社会実験を通して課題解決への糸口を見出し、公共空間をどう使うのか話し合いながらお互いが歩み寄った結果、共存することに成功したのだ。
今では禁止看板は全て取り外され、「決められた曜日と時間であれば許可する」という看板が設置されただけでなく、都市整備計画においても設計段階からスケートボードを考慮するようになった。しかもそれはベンチや花壇の脇をスチールアングル(L字型の鋼材)で補強するという簡単なもので、新たにスケートパークを建設するよりはるかに安価だ。
さらに行政がスケートガイドまで発行しているのだから驚きだ。これはスケートボードができる場所や時間、はたまた通行人に注意が必要なのかといった細かな情報を色分けしマッピングしたもの。
ショップの所在地等も明記しているので、観光客でも楽しめる中身になっている。豊かな建築遺産があり、歴史的な建造物とモダンな建築が並存したボルドーの街並みを生かした、「スケートボード版まちづくり」と言えるだろう。
地元企業の力で体育館を世界基準の施設に
では日本にボルドーのようなまちづくりをしている都市はあるのか? と聞かれたら、限りなくノーに近いと言わざるを得ない。だが”施設ありき”なら各所で見られる。
最近増えているのが、廃校などの空き施設をスケートパークとして再利用するパターン。少子化社会の現代にあって、学校の統廃合が全国各地で起きており、体育館やプールは路面もスムーズでスケートボードとの相性がいいのが大きな理由だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら