日本株も急落、アメリカ経済は悪化傾向強まるか インフレ最終局面、年内複数回の利下げか注目

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逆に債券利回りが大幅に上昇すれば、金融環境が急激にタイト化し、金融システムに負荷をかけたり、景気に悪影響を及ぼしたりする。また、株価が大幅に上昇すれば、資産効果が生まれる。他方で、株価が調整局面となれば、資産効果は減り、個人消費の下振れリスクともなりうる。

また移民に関しては、これまで労働供給増加の担い手であるとともに、需要増加の担い手でもあった。バイデン政権は6月以降、移民規制を強化したが、移民が急激に減ってしまえば、労働需給の緩和が進みにくくなり、インフレ圧力が温存しかねない。

適度な金融環境や移民流入がソフトランディングを可能にするが、それが逆回転すれば、ソフトランディングの蓋然性は低下する。つまり、これまで通りを維持することが重要だといえる。金融政策運営を通じてこれまで通りのアメリカ経済の実現をサポートできるかがFRBに求められている。

――大統領選まで約3カ月です。またハリス氏もトランプ氏も積極財政の姿勢ですが、市場や経済にどのような影響が考えられそうでしょうか。

従来の大統領選挙と景気の関係は、景気が良ければ現職に有利、景気が悪ければ対抗馬に有利というものだった。景気悪化を伴わずに、高インフレから脱却し、利下げへとこぎつければ、バイデン政権には追い風だ。

ただ、今回バイデン氏は大統領選挙から撤退し、ハリス氏が代わりに参戦する見込みだ。ハリス氏もバイデン政権の中心人物のひとりであるが、アメリカ経済のソフトランディングがハリス氏の実績として認識されるかは不透明といえる。

政治で注目は議会多数派の行方

大統領選挙後のアメリカ経済に関しては、議会で民主・共和党のどちらが多数派をとるかによって積極財政の実現度が左右される。ねじれ議会など、大統領と議会の多数政党が異なれば、議会の承認が必要な財政政策は実現が難しくなる。

11月の上下院選挙に関しては、上院は共和党が優勢、下院も僅差で共和党が優勢だ。トランプ氏が大統領選挙で勝利すれば、減税は打ちやすくなると考えられる。ただし、共和党内で財政規律を重んじる議員も存在することから、大幅な多数派にならない限りは、トランプ氏でも大規模な景気対策は難しくなるかもしれない。

他方で、ハリス氏が勝利した場合は、ねじれ議会となることが想定される。ハリス氏は分配政策や気候変動対策に積極的だが、法案成立のハードルは高い。大規模な財政政策が難しいということは、需要喚起によるインフレ圧力の高まりを避けるという意味ではポジティブとも考えられるだろう。

現大統領であるバイデン氏が撤退した以上、トランプ氏が勝利するにせよ、ハリス氏が勝利するにせよ、政策の不確実性は高くなる。景気悪化を避け、インフレの高止まりを避けることだけでも困難であるにもかかわらず、当面は政治要因によってアメリカ経済の不確実性を増すことへの心の準備が必要だろう。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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