日本株も急落、アメリカ経済は悪化傾向強まるか インフレ最終局面、年内複数回の利下げか注目

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ただ、インフレの高止まりリスクと景気下振れリスクのどちらもが同居している点は注意が必要だ。生産者物価指数(PPI)は前年比ベースで加速している一方で、CPIは前年比ベースで減速している。これは企業収益が悪化する可能性がある。

企業は薄利多売で収益を確保する選択肢も持つが、それは景気が万全のときだろう。景気に下振れリスクがあれば、薄利多売はしにくい。企業が値下げに躊躇すれば、結果的に最終販売価格、言い換えればCPIも下げ渋る可能性がある。

カギとなる景気に関しては、足元まで堅調ではあるものの、低中所得層を中心にクレジットカードの延滞率やカーローンの延滞率は上昇している。また7月半ばから起きた株価の調整は、高所得層の所得効果を減らし得ることから、個人消費が減速する可能性はあるだろう。

利下げ可能性の言及がむしろ懸念に拍車

――ソフトランディングがメインシナリオということですが、8月2日には日経平均も歴代2番目の下げ幅(5.8%下落の2216円安)となりました。足元で新規失業保険申請件数の上振れや製造業景況感指数の悪化で、アメリカ経済の下振れリスクが懸念されたことも拍車をかけたようですが、アメリカ経済は悪化傾向を強めますか。

これまでは、「Bad News is good news」(悪いニュースはいいニュース)と捉えられていた。しかし、インフレが落ち着きつつあり、景気の下振れリスクが懸念されつつある中で「Bad News is bad news」(悪いニュースはやはり悪い)と捉えられたといえよう。

こうした背景には、パウエル氏が今回のFOMCで景気、とりわけ雇用環境の悪化に対しても注意すべきと指摘したことがあるだろう。パウエル議長が利下げ可能性を示唆したのは、景気や雇用環境の悪化を知っていたからではないか、と市場は思ってしまう。

他方で、景気の下振れリスクに関しては、ISM製造業景況感指数を過信するべきではなく、新規失業保険申請件数も昨年の同時期に増加したように季節性が出やすいことを考慮すべきだ。景気の下振れリスクを意識すべきか否かは、最注目の雇用統計とISM非製造業景況感指数の結果次第といえる。

こうした中で、7月の雇用統計は失業率が上昇しただけでなく、非農業部門雇用者数も市場予想を大きく下回ったことから、雇用環境の悪化を示唆している。ISM非製造業景況感指数は6月に好不況の分かれ目である50%を下回っており、7月も下回れば景気悪化リスクが一層意識されやすくなるだろう。

――ハードランディングの可能性や今後リスクシナリオにつながると注目する要素やポイントは何でしょうか。

金融・株式市場、移民流入など、これまでアメリカ経済を支えてきた諸要素が急変しないことがソフトランディングのカギとなる。例えば、債券利回りが大幅に低下してしまえば、インフレ圧力が大幅に緩和してしまう。

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