僕が「ザハ案新国立」建設に大賛成だった理由 建築の経済的価値は「長期スパン」で考えよ

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ぼくは、ザハ案の国立競技場はけっして悪いデザインではなかったと思っている。ばかばかしく巨大に見えるが、建築がばかばかしく巨大なほうが面白いのは明らかだ。世界の名建築は、大抵ばかばかしくて巨大である。

たとえば、ピラミッドやベルサイユ宮殿やサグラダ・ファミリア教会やシドニーのオペラハウスのことを想像してみてほしい。これらを建てるのには、当時も多額のおカネが必要だった。そして当時も、それに反対する人は少なからずいただろう。これらにおカネを費やさなければ、人々の暮らし向きはもっと豊かになるはずだと。

国を挙げての大ブームが来ていたかも

しかし、これらがもし建っていなければ、その後の観光客は生まれなかった。そうして、天文学的な数字の経済損失となっていたはずだ。

巨大建築というのは、百年以上の長いスパンで考えなければ本当の経済価値は見えてこないものなのだ。ピラミッドがどれだけの経済効果をエジプトにもたらしたかということを考えれば、2520億円という額がけっして高いものではないと分かるのである。

もしそういう歴史的、あるいは建築学的な知見を有していれば、ザハ案の国立競技場の建設に反対することは「筋が悪い」と分かるだろう。断言してもいいが、もしこれが設計図通りに建てられていたなら、国を挙げての大ブームが起きたはずだ。

そうなると、平野さんや為末さんをはじめ、建設に反対していた人たちは肩身の狭い思いをすることとなったはずなのである。

 
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岩崎 夏海 作家

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いわさき なつみ / Natsumi Iwasaki

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著『部屋を活かせば人生が変わる』(累計3万部)などがある。

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