やばすぎるNetflix「地面師たち」後味の悪い魅力 綾野剛と豊川悦司演じる「100億円不動産詐欺」

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ただ不思議なことに単なる憎たらしい極悪人に見えるというわけではないのです。演じる豊川悦司自身が持つ色気にも助けられていそうですが、死に興奮を覚える薄気味悪さが強烈です。後味の悪い展開があるたびにハリソン山中はいったい何を考えているのか、知りたい欲求に駆られてしまいます。

方向性によってはファンタジーに寄せて犯罪者集団をカッコよく描くこともできたでしょうし、不正を正す警察視点で正義感を強めることもできるなか、生易しく俗ウケを狙っていません。狂気の沙汰を打ち出すことに躊躇していないようにも感じます。これによって、地面師詐欺だけではなく、死体がゴロゴロ出る犯罪サスペンスの要素を強めています。

実話に基づく犯罪ドラマが人気

世界水準の犯罪サスペンスに仕上がっているとも言えそうです。そもそも犯罪モノは世界的に人気ジャンルの1つです。実話に基づいた犯罪ドラマが世界全体で増加傾向にあることがスイスのメディア調査会社WITから報告されています。Netflixをはじめとする配信ドラマから次々と犯罪系の新作が投入されていることが影響しています。

Netflixでは非英語の犯罪モノが世界ヒットするケースもあり。その例に挙げられるコロンビアを舞台に麻薬組織とアメリカから派遣された麻薬取締捜査官が攻防戦を繰り広げるスペイン語と英語ミックスの「ナルコス」や、スリナムの裏社会を牛耳る麻薬王の逮捕劇を描く韓国オリジナル「ナルコの神」はいずれも実話ベースの犯罪モノです。

詐欺師という括りでは、実際にあった詐欺事件をもとに作られたアメリカの「令嬢アンナの真実」もNetflix世界ヒット作の1つにあります。

要は「地面師たち」は世界ヒットを期待したくなる作品でもあるのです。近々発表されるNetflix公式グローバルランキングでその結果が明らかになります。あるようでなかった日本の不動産詐欺を巡るサスペンスドラマの新しさと中身の質の高さは数字にも表れる価値ある作品だと思います。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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