学校の役割も変わる、教育学から学習学へ転換を
しかも、学歴の価値も年々相対的に下がってきています。就職活動でも、どこの学校を出たかだけではなく、そこで何をしてきたのかという履歴とこれから何をしていきたいのかという意思や意欲が重要視されるようになりました。
そうなると、学校教育の中で重要視すべきは、何を教えるかではなく、どれだけ学びに向かう姿勢を育てられるかではないでしょうか。
学校に通う時間の中で、受け身ではなく自ら学ぶ姿勢や学びの楽しさを実感できていれば、卒業後に続く長い人生の中で、さらに主体的に学び続けることができます。
また大学入試も総合型選抜が6割を超えてきています。こうした時代の変化にともない、中等教育では変化の兆しもあります。以前紹介した横浜創英高等学校で行われている、教育カリキュラム改革もその一つです。
その目的は、与えられるのを待つのではなく、自ら取りに行く力を育てること。それこそが、本間氏の言う学習学が目指していることに相違ありません。教育と学習の違いについて本間氏は次のように述べています。
学校や教師、教育プログラムなど、外部からの情報や知識が個人に伝達されるプロセスです。教育は、特定の知識やスキルを習得するための体系的なアプローチです。
・学習=個人の内側から外側への働きかけ
学習者が自らの興味や関心、必要に応じて情報を収集し、探求し、外部の世界と対話しながら知識を深めていくプロセスです。学習は自己主導的であり、個々の成長や発展を目的としています。
これはすなわち、今の学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びが目指していることです。本間氏は、今回の『100年学習時代』に込めた想いを次のように語ります。
「本書の目的は、『勉強しなければ』という不安感ではなく、『学ぶことの楽しさ、素晴らしさ』を社会に広めていくところにあります。人生100年学習社会に必要なインフラは整ってきています。あと必要なのは、私たち自身が、古い教育観から脱却して新しい『学習観』に立つことなのです」
多くの親たちは、「うちの子は勉強が嫌いだ」「やる気がない」と嘆きますが、子どもたちに意欲を持ってほしいと願うなら、まず大人自身が学ぶことは楽しい!と実感することが必要です。そして教師の真の役割は、子どもたちに学びの楽しさを伝えることではないでしょうか。
皆さんも、自分史上最新の学習歴を更新してみてはいかがでしょうか。
(注記のない写真:タカス / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
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