大谷翔平の新居「晒すメディア」なぜ叩かれるのか スターや芸能人の個人情報への向き合い方の変遷
それから徐々にプライバシー意識は高まっていったが、つい最近まで、芸能人や公人に準ずる人物であれば、「有名税」として処理されることも多かった。2018〜2019年ごろの小室圭氏をめぐる取材は、「皇族の婚約者」であることも背景にあり、競うように各社が報じた。
こうした取材の根底には、注目人物においてはプライバシーよりも、ニュースバリューが優先されるとの考え方がある。今回のフジや日テレ報道をめぐっても、「公益に資する情報だ」「読者の興味にメディアは忠実であるべき」といった擁護は見られる。しかし、一時期ほど、そうした論調はないようにも感じられる。
なぜ風向きが変わったのか。まず可能性として考えられるのが、コロナ禍による影響だ。一時期はスタジオ収録であっても、ソーシャルディスタンスを保ったうえに、人数を絞って番組作りが行われていた。報道においても、あれだけ「密」を避けるよう呼びかけておきながら、みずからが「不要不急な取材」をしてしまえば、ダブルスタンダードではないかとの指摘は避けられない。
高まる「プライバシー暴露報道への嫌悪感」
もうひとつの要素が、芸能人の自死だ。その背景には、SNS上での誹謗中傷のみならず、いまに至るまで理由がはっきりしていないケースもある。おそらくコロナ禍で、職業や人生の先行きが不透明になるなかで、心理的な不安を抱えていったのだろう……と察するほかないが、相次ぐ報道によって、世間一般に「著名人でも、ひとりの人間だ」といった考え方が広がるきっかけになったのは間違いないだろう。
そこへ映画界やアイドル界などでの「性加害」問題が重なった。個人の権利が重んじられるようになり、それは著名人であっても例外でないと理解されてきた結果、さらに「プライバシー暴露報道への嫌悪感」は高まったのではないか。
大谷選手や、アスリートをめぐる情勢も変化した。改めて言うまでもないが、元通訳の水原一平氏による不正送金事件を経て、大谷選手に共感する人は増えたはずだ。そもそもプライベートの暴露は受け入れられにくいが、そこへ「被害者である大谷さんに、さらなる追い打ちをかけるのか」といったストーリーが重なることで、より受け手は感情移入しやすくなる。
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