日立・三菱重工の経営統合は幻だったのか?--中西宏明・日立製作所社長に直撃インタビュー
日立製作所と三菱重工業の経営統合が報じられてから1カ月半。その間、両社の言動からは統合に向けての具体的な動きは見えてこない。沈黙を続けてきた日立製作所の中西宏明社長に真相を聞いた。
--まず事実関係を確認させてください。日本経済新聞が「日立・三菱重工 統合へ」と報じた8月4日当日の早朝、中西社長は自宅の前で報道陣に追認するような発言をしました。
ああいう記事のようなことはございません。もちろん私ども、こういうグローバルな時代にどのようにして競争力をつけるのか、いろんなところといろんな話をしている。その中で、三菱重工さんとは具体的な事業統合をした事例もあるし、10月1日付で水力(発電システム事業)も統合する。接触する機会が多いということで、ああいう記事が書かれたのだと思う。正直、戸惑っている。
--具体的な案件についての交渉は?
先々の話は(三菱重工の)大宮英明社長や佃和夫会長と会って話もしているし、可能性がないわけではない。
丸ごとの経営統合はないが、今でもシナジーはあるとは思っている。僕らの背中を後押ししているのは何かというと、日本の市場の奪い合いとか、メンツの話とかではなく、経済がグローバル化した時代にどうやって生き抜いていくかということ。
電力や社会インフラ分野では競合相手が変わってきている。欧米じゃないんですよ。韓国が出てきて、ロシアが出てきて、これから中国の企業が出てくる。こうした競争相手は、原価の勘定の仕方からしてまるで違う。そういった世の中で、本当に競争力を持った組織作りをどうしていくか、強烈な問題意識がある。あらゆる可能性を探るのは経営者の義務だと思います。