かつては自宅で最期を迎えることが一般的で、病院死はまれだった。それが逆転した現在、「自分も家族もいずれ死ぬ」という実感は薄れて遠い存在となり、やがて忌むべきもの、目を背けたくなるもの、になった。
しかし本書は死と正面から向き合う。死期の迫った患者たちが、時に自覚的に、時に家族や医師、行政、大家の「都合」に翻弄されながら、日々をどのように過ごしたのか。すでにこの世にはいない先人たちの体験を、80代の訪問診療医・小堀鷗一郎が綴(つづ)った貴重な記録だ。
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