今から東京で家を買うなら、台東区や江東区だ 「郊外の一戸建て」を目指す時代は終わった

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ところがいつの頃からか郊外の専用住宅から都心に働きに出るように職住が分かれてしまった。しかし長い年月を経て、またかつてのように合体していくと考えるといいだろう。

つまりこれからわれわれは昔に戻っていくわけだ。しかし、この方がオンとオフを一体化するという意味でも実は効率的であることに改めて気がつく。1階はパブリックに提供し、2階以上はプライベートゾーンとして生活するのは、街のためにも理にかなっている。フレームがはっきりした街並みは随分と美しくなるだろう。

ただし、こうした家をマネジメントしていくには、自分のビジネスモデルをプレゼンテーションし、住宅ローン+αのおカネを借りて運営していくというマネジメントスキルが必要になる。住宅ローンだけだと商業地の地価は高く、計画資金が足りないのだ。

その意味で注目したいのは、例えば蔵前(東京都台東区)や清澄(同江東区)など東京の東エリアの商業地だろう。そこでは古いビルが一棟丸ごと売りに出されていて、比較的リーズナブルな値段で流通している。ビルを一棟買いし、テナントの賃貸に有利なようにカスタムするには、今の東エリアは最適だと言える。

逆に、4LDKの6人家族が暮らすような大型の一戸建ては、家の掃除や庭の管理など大家族全員で力を出して共同体をつくりながら維持する必要があるため、人気薄になることは確実だ。

家族を持たない人は、シェアハウスやゲストハウスへ

一方で、旧来の大家族とは別に、オルタナティブなパブリックをつくる活動を本能的に始めている若い人たちの動きも見逃せない。

原宿にある企業の独身寮をリノベーションしてできあがった「The share」というシェアハウスはその好例だ。個室自体は5畳ほどと狭く、クローゼットもほとんどないただの部屋だが、大きなキッチンやダイニングテーブル、ライブラリールームなどが揃う共用部分は非常に充実しており、1階にはセレクトショップやレストランも入っている。

賃料は一部屋10万代前半。その家賃を払うのであれば、中野や高円寺の1LDKのマンションにも十分に住めるが、入居者には一人ぼっちのワンルームに帰るより、人と交流することを選択している人が多い。現代はさまざまな理由で家族という形式を諦めていたり、そもそも結婚を望まない若い人たちも少なくない。家族に代わる新しい人とのつながりを模索した結果、それらの人々はソーシャルネットワークや、シェアハウス、ゲストハウスなどに交流の場を求めている。

自分たちが必要とするサイズ感覚にフィットしたコンパクトな家に住み、人と関わる共用部分にこそ価値を置く。いわば、地域共同体を東京のど真ん中で営むという構造だ。これは、かつてとはまったく異なる動きである。今後、日本の「住宅すごろく」が大きく変わっていく予感がする。

黒崎 敏 建築家

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くろさき さとし / Satoshi Kurosaki

1970年石川県金沢市生まれ。1994年明治大学理工学部建築学科卒業後、積水ハウス株式会社東京設計部で新商品企画開発に従事、FORME一級建築士事務所を経て2000年APOLLO設立。2008年株式会社APOLLOに改組。現在、代表取締役、一級建築士。「グッドデザイン賞」「東京建築賞」「International Space Design Award」グランプリなど国内外の受賞歴多数。都市住宅を中心に国内外で設計活動を行う。
 

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