日本人が続々スペインサッカークラブを訪ねる訳 「ビジャレアルCF」で活動する指導者の視座

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(写真:角田さん提供)

「指導者には選手の成長支援としての役割があるんですよ、そのために自分の学びの領域を広げていったほうがいいですよねと伝えたいですね。そこに自分の人として、指導者としての自己成長もくっついてくるわけじゃないですか。そうやって学びをどんどん展開させて広めていきたいです。ビジャレアルは世界でも稀なスポーツクラブだと思っています」

迎え入れる佐伯さんによると、今回の視察は「サッカーをひとつの産業としてとらえている姿を見てほしい」と話す。ビジャレアルはセラミックタイルの会社がスポンサーだ。町は19世紀はオレンジ産業、産業の多角化が進んだ20世紀はセラミックタイルの製造が加わった。そして21世紀は3つめの柱としてスポーツ産業を発展させようとしている。

その意味から、ビジャレアルの新スタジアムの名前は、世界的タイルメーカー「パメサ・セラミカ」ではなく「セラミカ(セラミックタイルのスタジアム)」。つまり、産業の名前をつけている。フェルナンド・ロッチ会長の口癖は「一企業のひとり勝ちはありえない」。シェアを争っているばかりでは企業の未来はないとの信念からである。この日本では考えられないような崇高な理想が、実現化されているのだ。

ビジャレアルの強み

ビジャレアルはなぜこんなにも日本人を惹きつけるのだろうか。

この質問に佐伯さんが答えてくれた。

本音で向き合う。自分を疑って進む
クラブ理念や、佐伯さんの32年間の歩み、そして『教えないスキル』に続いて、4月12日に『本音で向き合う。自分を疑って進む』(竹書房)が刊行された

「理論・理屈・綺麗ごとを、日常の現場で応用・実践しているクラブだからなのかもしれません。そして、それらの実践現場をこの目で見てみたいという思いや好奇心が、彼らを突き動かしていることを肌で感じます」

まさに理想を実現する哲学。経営、運営、指導すべてに哲学があるのが、ビジャレアルの強みに違いない。スペインの他クラブからも「ビジャレアルでプレーしたい」「指導したい」といったラブコールが多く寄せられる。そのことは「クラブが本音をさらけ出して、意見をぶつけ合って、自分たちの価値を高める努力をしてきたからだと思います」(佐伯さん)。

スポーツビジネスに限らず、すべての企業ビジネスで大切にしたい本質のようなものが、そこに存在するのかもしれない。

ビジャレアルCFのフットボールマネジメント部で活動する佐伯夕利子さん
島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文芸家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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