学級経営の危機「6月」目前、規律やルールだけではNG「クラスの荒れ」への対処法 教室の秩序形成に必要な教師と子どもの関係性
これまでの研究者や実践家の主張においては、学級集団の安定は2つの関係性の構築によってもたらされると述べられてきたと捉えています。1つは「規範やしつけを通じたつながり」、もう1つは「互いを思いやる共感的なつながりや心の通い合い」です。
規範やしつけの話をすると、管理や強制と結びついてネガティブなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、人が複数集まる場には、ある程度の価値や態度、行動様式の共有が必要となります。前回申し上げた心理的安全性も、そうした共有事項の問題です。
心理的安全性・行動分析の研究を行っている石井遼介氏は、日本の組織における心理的安全性の構成要因には、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」といったものがあることを見いだしました(『心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える』日本能率協会マネジメントセンター)。
何でも言えるとか、困ったときはお互い様だから助け合うなどの状態は、そうしたことの価値や行動が共有されて実現します。これらの行動が促進されるためには、互いの話を傾聴する姿勢や人を傷つける言動をしないなどの共通の行動様式の共通理解も必要となるでしょう。良好な関係性は、他者を尊重したり、互いに信頼し合ったりするための行動の共有によってできてくるのです。
このような他者と良好な関係を形成するための行動様式は、共感的なつながりや心の通い合いをつくり、教室の過ごしやすさや学びやすさを形成していくことでしょう。共通の行動様式が先か、共感的な関係が先かは議論が分かれるところですが、こうした2つの関係性が相乗作用を起こしながら、教室の秩序を形成していくと考えられます。
秩序が整った教室とは、ルールで統制された教室ではない
私たちの生活する社会の安定が、秩序を基盤に成り立っているように、安定した教室を成り立たたせているのも、秩序だと言えます。
現在の学級経営には、「~してはいけない」といった禁止事項が多く存在する一方で、互いが過ごしやすくなるための良好な関係性を促進する行動様式があまり教えられていないのではないでしょうか。そのために、ルール、規範を指導すると禁止事項が増えて雰囲気が悪くなるという認識をもっている方がいるのかもしれません。