「10人超が一斉に」異動や若手教員の離職が多い学校で見た、校長・教頭の姿勢 心理的安全性の確保が学校にも求められる

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高い倍率をくぐり抜けただけでなく、今ほど人材の流動性が高くない時代を生き抜いてきただけに、転職の選択肢もなかっただろう。そうして培われた「打たれ強さ」を若手教員にも求めてしまうのは無理もない話だ。

「不幸なのは、この問題に校長や教頭が気づきにくいことです。現在の学校の評価制度は、上から下しかないんですね。現場が困っていても突き上げられませんし、管理職はよほど誤ったことをしていなければとがめられることもありません。個人的には、垂直的な評価だけでなく、複数が多面的に評価する360度評価を取り入れるべきだと考えています」

加えて、管理職の教員は、職場の心理的安全性を高めようとする意識を持つことが重要だと長澤さんは語る。

「ただでさえ教員のイメージが低下している今、教員の道を選んでくれたことに感謝するくらいの気持ちを持つことが求められていると思います。笑顔を絶やさず、ニコニコと話しかけてのびのびと力を発揮できる環境を整えることが必要ではないでしょうか。雰囲気を盛り上げると、新たな目標にも意欲的に取り組んでくれますし、そうやって先生たちが楽しそうに取り組んでいれば子どもたちも安心するものです」

長澤さん自身、教頭となってからは「一緒に取り組もう」という姿勢を前面に出し、相手を否定せず、かつ自律的な行動を促すよう心がけているという。結果、通知表の廃止を含むさまざまな改革を実現し、勤務校は教員のみならず地域住民からも高い評価を受けているそうだ。

「学校は前例踏襲のクセがついているので、なかなか変えようという方向に進まないと思います。でも、実は校長や教頭の裁量でいろいろなことが変えられるのです。子どもたちのためにも、前例にとらわれず、先生同士がチームワークを高めて課題解決に取り組んでいくことが重要だと思います」

できない人材を「使えない」と切り捨てるのは簡単だ。しかし、その結果学校運営が成り立たなくなっては元も子もない。能力が低く見える教員をもどかしく感じることもあるかもしれないが、画一的な教員像に当てはめるのではなく、個々の持ち味を引き出すことが大切だと長澤さんは話す。児童・生徒はもちろん、教員の多様性を尊重し、ウェルビーイングを高めることが、職員室の運営にも求められているのではないか。

(文:高橋秀和、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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