「10人超が一斉に」異動や若手教員の離職が多い学校で見た、校長・教頭の姿勢 心理的安全性の確保が学校にも求められる

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30人でも15時間。それだけの時間をかける意義があるならともかく、所見を基に個別の対策を立てるわけでもない。「少なくとも、毎学期必要なものとは思えない」と長澤さんは話す。

「通知表は校長の判断だけで『出す』『出さない』を決められますし、内容も変えられます。実際、必要ないと感じている先生も多いんです。でも、前例を踏襲するほうが楽だから校長は変えない。こうした非合理が積み重なると不満もたまるので、職員室全体がギスギスしていきます」

校長や教頭の態度が原因で、10人超が異動した学校も

業務量の多さに対応しきれない若手教員への、校長や教頭など管理職の態度も問題だと長澤さんは話す。

「『自分たちは対応できた』という成功体験があるからか、できない先生を下に見る傾向があります。ダメな部分にばかり目を向けて『使えない』と突き放したり、あれこれうるさく指導する校長は少なくありません。

特に最近は、教員不足で臨時的任用教員を採用する機会も増えていますが、経験がない先生が苦労するのは当然なのに、『優秀じゃない先生ばかり来るせいでうまくいかない』と愚痴をこぼしたりもします」

その影響は、若手教員の離職という形で表れている。文部科学省の学校教員統計調査「年齢区分別 離職教員数」によれば、2022年度の25歳未満の離職教員数は552名。2019年度の前回調査482名から70名も増えた。2022年度の25歳未満の採用教員数が3360名であることを踏まえると、割合も高い。

「離職まで至らなくても、こういう校長や教頭がいる学校は異動が多いんです。一斉に異動希望が出されるので、教員間でもすぐ話題にのぼります」

長澤さんの勤務校がある自治体では、1回に10人以上が異動した小学校もあるという。そこまで入れ替わると、すぐに体制を立て直すのも難しい。子どもたちにとってよいことかも疑問だ。

「あくまで私の経験ですが、先生同士が連携し合い楽しく仕事をしているほうが、子どもたちのために動きやすいものです。校長や教頭などの管理職になる先生は、それぞれ理想の学校像や教育のあり方を描いています。しかしそれ以前に、先生が働きやすい環境を整えることが重要だと感じます」

管理職が「心理的安全性」を確保することが必要

長澤さんの言葉のように、管理職になる教員は教育に理念や情熱を持っている人が多いはずだ。なぜ、若手教員にはきつく当たってしまうのか。

「今の校長や教頭は、40代後半から50代前半が中心です。教員採用試験の倍率がどんどん高くなり、10倍を超えた時代に採用試験に合格した優秀な人たちです。学校を嫌って反発していた人は恐らく少なくて、言われたことに従順な人が多いと思います。できない人の苦しみや、仕事をうまく回せない人の気持ちが理解できないのではないでしょうか」

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