ついにアマゾンが書籍の「安売り」を始めた! 「もしドラ」、2割引きだったら買いますか?

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アマゾンが当該書籍の20%の値引き販売を行えば、当然、オンライン書店や町の本屋も影響を受ける。再販指定を解除した書籍はアマゾンだけでなく、どの小売店でも値引き販売をできる。そのため、アマゾン以外にも値引きをする書店が表れる可能性が高い。

なお今回の値引きは期間限定のキャンペーン。そのため、キャンペーン終了後は価格を元に戻す予定だ。ただし、アマゾンはこうしたキャンペーンを1回だけで終わらせるわけではない。他の出版社にも継続的に声を掛けながら、「値引き販売」を仕掛けていく意向だ。

しかし、アマゾンの狙いは、期間限定キャンペーンをやることではなく、恒常的に自由な価格で販売できるようにすることだ。「価格の柔軟性があれば返本率を減らすこともできる。マーケットを活性化させることができると信じているため、なるべく早く、"自由な価格で売れること"を普通のことにしたい」(種茂本部長)。

新刊本を自由価格にするのが究極の狙い

ただし時限再販化した書籍、つまり発刊から一定の期間が経過した書籍しか値引きできなければ、大きな課題が残る。そもそもアマゾンでは第三者が販売する「マーケットプレイス」の仕組みを活用し、多くの事業者が中古の書籍を販売している。マーケットプレイスには、「1円」で売られている書籍もザラにある。いくら20%引きにしたところで、マーケットプレイスで販売されている価格より高ければ、多くの読者の食指は動かない。

村井バイスプレジデントは「中古本は一切買わず、新品しか買わないお客さんもいる。そうした人たちには20%引きは響くはずだ」と説明するが、これだけでは大して売れるわけではないだろう。

当然、アマゾンが目指しているのは新刊を含む、完全な自由価格だ。米国やイギリスでは、小売り事業者は新刊の段階で自由な値付けで販売できる。出版社が決めることができるのは「卸値」だけであり、販売価格(再販価格)を決めるのは小売り業者なのだ。

まず一部の出版社との取り組みで前例をつくりあげ、そこに顧客の支持があることを示すことで、大きく業界の構造を変えていくのが、アマゾンの作戦だ。公正取引委員会が例外的に認めてきた、「再販価格の拘束」は、風前の灯なのかもしれない。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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