「いじめ防止法」改正の署名活動する遺族の思い 被害者を追い詰める学校の対応に罰則規定を

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勇斗くんが残した遺書や手記には、いじめ被害の示唆や加害者の実名が含まれていた。真相を知りたかった遺族は、武川氏の申し出を断り、第三者委員会による真相究明を求めた。

学校側は第三者委の設置には応じたが、それ以外は遺族の要望をことごとく拒否した。全校保護者会の開催、勇斗くんのクラスでの命に関する話し合い、加害者への指導……。いずれも再発防止を願っての依頼だったが、学校側は「すべて第三者委に任せた。彼らにやれと言われたらやる」と繰り返した。

第三者委は約1年4カ月の調査を経て、2018年11月に「自死の主たる要因はいじめ」と報告書で結論づけた。教職員のいじめ防止に対する認識や取り組みが不十分だと主張し、加害者への指導などを求めた。

ところが、学校側は第三者委の結論を「論理的な飛躍がある」などと批判し、報告書の受け入れを拒絶。結局、加害者は何の注意も受けないまま、2019年3月に卒業した。

死亡見舞金を口封じの材料に

遺族は行政にも助けを求めた。報告書の完成前、長崎県学事振興課(海星高校は私立なので教育委員会の管轄ではない)に窮状を訴えたのだ。だが、担当者の返答は「学校側は真摯に対応している」というものだった。

県と遺族、学校による3者での面会でも、県担当者は「(武川氏の)突然死の提案はギリ許せる」と発言。さおりさんは文科省に電話で相談したが、「私立高校に対応すべきは県」と取り合ってもらえない。現行のいじめ法制度では、私学への介入権限が行政側にないのだ。

後に報道でこの事実が明るみになると、不適切な発言だったとして、県側は遺族へ謝罪した。一方、釈明のために県が開いた会見では、「学校側の言動を積極的に追認したわけではない」と説明している。

学校側は日本スポーツ振興センター(JSC)への災害給付金の申請も拒否した。学校管理下のいじめで子供が亡くなった場合、遺族は学校保険制度に基づき、死亡見舞金を受け取れる。この手続きに応じなかった。

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