東証・大証統合の前途多難《上》「主導権争い」「裁判」「従業員」--統合交渉を阻む高いハードル
東証は01年に会員組織から株式会社組織へ変更されたが、株主は旧会員の証券会社であり、未上場会社。歴代の理事長・社長ポストが長年、大蔵・財務官僚、日銀の天下り先でもあっただけに、閉鎖的、官僚的な体質が根強いとも指摘される(現在も、東証グループ傘下にある東京証券取引所自主規制法人の理事長は林正和・元財務次官)。
一方、大証は01年に株式会社へ組織変更後、04年にはヘラクレス市場(現在はジャスダック市場へ統合)に株式を公開している。株主数は4300人以上で、外国人投資家の持ち株比率が66%を占める。開かれた組織としては、上場企業の大証のほうが「先輩格」と言えなくもない。
また、デリバティブ(派生商品)市場に強いため、株主資本利益率(ROE)などで見た収益性や効率性でも大証が優位にある。それだけに、東証に呑み込まれるような形の統合には会社全体として抵抗が強いかもしれない。
こうしたさまざまなハードルを考えると、統合に向けた交渉は前途多難が予想される。しかし一方で、証券取引の国際化やハイテク・高速化が進み、取引所間の国際的な競争が激しさを増す中、各取引所は効率化とシステム投資の高度化が求められており、そのための合従連衡も不可避とされる状況となっている。
証券取引所は資本主義を支える「社会の公器」「経済の中核的インフラ」であり、国際的な地盤沈下を防ぐために、取引所を含めた日本の証券界はどうあるべきなのか、証券行政を含めて総括する必要がある。国内、組織内での主導権争いや内部抗争に時間を浪費している場合ではないだろう。
《下》では、国際的な取引所再編と東証・大証の統合メリットなどについて詳報予定
(中村 稔 撮影:尾形文繁 =東洋経済オンライン)
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