東証・大証統合の前途多難《上》「主導権争い」「裁判」「従業員」--統合交渉を阻む高いハードル
しかし、この場合、大証によって買収される形となる東証サイドの抵抗が考えられる。未公開企業が上場企業に乗っかる形で上場するのは「裏口上場」との批判もあり、「取引所として上場会社の模範であるべき」(東証関係者)と考える東証としては、受け入れにくい手法だ。上場前で、市場を介さない買収は、価格面での「透明性」にも欠ける。
「上場前提の統合」を主張する東証と、「スピード統合」を主張する大証。主導権争いも絡み、両社の折り合いをつけるのは難しい。
誤発注裁判が続く東証は追加損失リスク抱え、上場も困難
統合交渉を阻む要因として、東証とみずほ証券との誤発注訴訟の問題もある。これが解決しないと、東証は上場も難しく、東証の資産査定にも限界がある。
この訴訟は、2005年12月に起きた誤発注事件が発端。みずほ証券が東証マザーズに新規上場したジェイコム株の委託注文を執行する際、「1株61万円」の売り注文を、誤って「61万株1円」と入力し、結果的に407億円もの売却損が発生した。
みずほ側は、誤発注後すぐに取消注文を複数回出したにもかかわらず、東証の売買システムの不具合で処理が行われず、損失が拡大したと主張。06年10月に約415億円の損害賠償を求めて提訴した。
09年12月に東京地方裁判所が出した一審判決は、東証に賠償金107億円の支払いを命じ、東証は不本意ながら従う意向を見せた。ところが、みずほは判決を不服として控訴。被告の東証も対抗上、控訴に転じ、係争は泥沼化した。
その後、東京高等裁判所の控訴審では、地裁で15回も行われた口頭弁論は1回も行われておらず、結審のメドは立っていない。
東証は一審判決後に賠償命令額に金利分を加えた約130億円を損失処理しており、10年3月期は2期連続の赤字に転落。これが、「10年度内」としていた当時の東証の上場計画を狂わせた経緯がある。