JR東日本、「品川再開発」には不安がいっぱい 13万平米の大型事業に不可欠な要素とは?

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鉄道会社の中で見れば、JR東日本は不動産業にもめっぽう強い。駅前の自社所有地に賃貸ビル24棟、ショッピングセンター154カ所、ホテル40超を保有、不動産大手顔負けの規模を誇る。ただ、いずれも駅およびその周辺の開発に限られ、街づくりの実績に欠ける。

近年の都心における街づくりの成功モデルとされるのは、六本木ヒルズや丸の内、日本橋の再開発。市川氏によれば、これらの共通点は「街にストーリーがある」ことだという。つまり、JR東日本が得意とするオフィスビルや商業施設といった箱モノを造って終わりというのでなく、街にエンターテインメントや文化・芸術的な要素を加味することで、「全体を1つの街として有機的に結び付けることに成功している」。

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市川氏が失敗の一例として挙げる品川駅東側の高層ビル群

一方で、市川氏が街づくりの失敗例として挙げるのは、旧汐留駅跡地を再開発した「汐留シオサイト」。そして、かつて品川駅東口にあった旧国鉄の品川駅貨物ヤードなどの跡地を再開発した「品川インターシティ」「品川グランドコモンズ」という2つのビル群である。

汐留シオサイトはオフィス、商業、文化、居住など複合都市の創出を目指したものの、土地を所有していた旧国鉄清算事業団が一体開発せず、デベロッパーごとに切り売りして開発させたために、「全体としてまとまりがない街になっている」と市川氏は指摘する。品川インターシティと品川グランドコモンズについては、「高層ビルが乱立しているだけの街並みは、街づくりの視点に欠け活気が感じられない」(同)。

新駅からも浮かび上がる不安

三井不動産、三菱地所、森ビルといった大手デベロッパーは、丸の内、日本橋、六本木ヒルズという街づくりを成功させた実績があるが、JR東日本はどうか。「これまで当社が経験したことのない規模」と自ら認める未踏の領域で、未経験の街づくりを行うことは、はたして可能なのか。

街づくりへの不安は、2020年開業予定の品川新駅からもうかがえる。駅名は決まっていないが、イメージ図は昨年6月に発表されている。JR東日本は「新駅とまちが一体化した空間を目指す」という。

しかし、イメージ図に駅周辺の景色は描かれていない。発表資料には「歴史や文化が感じられ、歩いて楽しい、歩きたくなるような自然豊かなまち」と記されているが、ここから具体的な街の姿をイメージすることは難しい。駅と街の一体化というなら、新駅だけでなく再開発エリア全体の構想も提示する必要がある。

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