ついにイタリアも標的に--円高再燃を招いた欧米の財政・景気不安は長期化を覚悟

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また、国際決済銀行(BIS)の統計では、各国銀行のイタリア向けの債権(公的部門、銀行、ノンバンク向け合計)は、フランスの銀行の3925億ユーロをはじめ、ドイツの1622億ユーロなど多額に上る(図表参照)。欧州金融界へ与える影響は極めて大きい。

 

現状は、市場の不安心理や投機マインドが実態以上に先行している感も否めない。

イタリアのGDPに占める公的債務残高の割合は2010年で119%と、ギリシャ(142%)に比べて低いものの、ポルトガル(83%)やアイルランド(96%)の水準を上回っている。

ただ、10年の年間財政赤字は対GDP比4.6%で09年の5.4%から縮小。6月30日には総額470億ユーロの歳出削減策が閣議決定され、14年におけるプライマリーバランス均衡に向けて前進。フローベースではEUの中で、むしろ「優等生」とも見なされていた。少なくとも今年春の段階では、12年に財政赤字のGDP比を3%以下に抑制するとの目標に向け、視界は明るかった。

それでも、投機筋に狙われる素地はあった。5月21日にS&Pがイタリア国債の格付け見通しをネガティブへ引き下げ、6月17日にはムーディーズがやはり格下げ方向で見直すと発表。両社ともに「イタリア経済の脆弱さ」を指摘している。

 実際、同国経済は今年1~3月期まで2四半期連続で前期比0.1%程度の実質成長率にとどまっており、緊縮財政によるさらなる景気下押し圧力が懸念される状況にある。また、ベルルスコーニ首相がスキャンダルで窮地に立たされ、財務相とも対立するなど、政権の動揺が自国のソブリンリスクを高める結果となっている。

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