総合型選抜に強み、スタンフォード大学のプログラムも学べる
こうした取り組みを通して培うのがヒストリック・キャプテンシップです。プログラムとしては、前述の通り、各界の第一人者から直接学べる機会ですが、岡田氏が考えるキャプテンシップとは、人々を引っ張るリーダーの育成ではありません。
キャプテンシップとは、主体性を持って多様な人を巻き込んでいく力です。FC今治高校の生活すべてが、生徒たちの心身をタフにし、主体的に生きる力を育てていくのです。
違いを間違いとせず、互いに認め合って力を合わせて未来を作っていく。そんな人が増えていったら、どんな未来になるでしょうか。ワクワクしてきました。
こんなすごい教育を行う学校がスタートするのに、まだ定員に余裕があります。告知までの時間が短かったこともあると思いますが、卒業後の進路を不安視する声もあるようです。
岡田氏は、とりあえず大学に行っておこうというような生き方はしてほしくはないが、大学受験にも対応できると言います。
今、大学受験が大きく変わってきており、私立ではすでに6割がそうですが、国公立でも今後3割が総合型選抜になるといわれています。
これは欧米型の自己推薦入試に近い形で、今後もっと増えていくと言われています。ここで問われるのは、ペーパーテストの学力ではなく、自分が何をしてきたのか、大学で何を学び、それをどのように活かしていきたいのかという意欲です。
本来、付け焼き刃的な取り組みでは対応できないのですが、大学側もその判断基準に課題を持っているのも事実です。そんな中、3年間みっちりとFC今治高校で体験を積んだ生徒は、自分の言葉で語ることができ、入試でも有利になるでしょう。
またスタンフォード大学国際異文化教育プログラム(SPICE)※というプログラムも提携が決まっており、海外大学進学にも道が開かれています。
※SPICE スタンフォード大学の部局が開発したプログラム。全編英語で実施している日米相互文化理解のためのオンライン講座。全国の優秀な学生が参加しているが、FC今治高校では30人の枠があり、うち10人の枠を地域の公立高校に開く予定。
残りの人生を賭けて取り組む覚悟
このように、ぶっ飛んだ取り組みを行うFC今治高校ですが、日本の学校教育改革の立役者の一人でもある鈴木寛氏(元文科副大臣)は、「この高校で行われようとしているのは、教育改革のグッドプラクティスの1つである」と言います。
最後に、この学校にかける思いを岡田氏に聞きました。
「67歳になって、次世代への責任を感じざるを得ません。世界は分断し民主主義はポピュリズムに陥っています。この行き詰まっている現実の中で、子どもたちのために何ができるかと考えると、共助のコミュニティをいろいろな場所にたくさん作ることが、世界をよりよく変えていく希望だと思っています。
すべての生物は命をつなぐために生きているのに、人間はそれを忘れているのかもしれません。未来を創る子どもたちのために何かをしたい。そんな思いで、残りの人生をこの事業に情熱を傾けていきたいと思っています」
入試では学力は、いっさい問いません。問われるのは自分の意志。ゼロからのスタートには不安はつきものだと思いますが、この挑戦に乗って共にトライ&エラーをしながら、自分の遺伝子にスイッチを入れたい!という心意気のある人は、ぜひこのラストチャンスに挑んでみてはどうでしょうか。私も開校したら、現地取材をする予定です。
(注記のない写真:すべてFC今治高校提供)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら