FC今治高校「ぶっ飛んでる」と話題の教育の中身、各界の第一人者が名乗り 卒業後の進路を不安視する声に対する回答とは

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毎月行われるヒストリック・キャプテンシップ養成講座では、まず講師からテーマを与えられて自習し、次の時間に直接講師と対話、最後に生徒たちから問いに対するアクションプランをプレゼンするというサイクルを毎月回していくのだとか。

このプログラムを担当するのは、東京大学教授鈴木寛氏、野球解説者の古田敦也氏、サイボウズの青野慶久氏、著作家の山口周氏、劇作家・演出家の野田秀樹氏、LDH JAPANのEXILE HIIRO氏など。またスポーツは元女子プロテニス選手の伊達公子氏、陸上の為末大氏、柔道男子日本代表前監督の井上康生氏ほか世界レベルの錚々たるメンバーからその生き方を直接学ぶことができるのも大きな特徴です。

また、街に出て地域企業と連携したプロジェクトや空き家問題など地域の課題解決に取り組む里山未来創造探究ゼミ、野外体験を行うヒューマンディベロップメントプログラム、抽象化力・編集力講座、金融リテラシー養成講座などさまざまな実践を伴う実学を通して、自分の「好き」を見つけ、1人ひとりの“学びたい”意欲を引き出す学習サイクルの構築を目指すカリキュラムになっています。

「日本一出会いの多い学校」というのは、このような多方面の魅力的な大人たちとの出会いもありますが、それだけではありません。

この学校では生徒も、全国から集まった多様な面々。入学者の中には、すでにやりたいことがあって、「今治で実現したい!」という生徒もいるけれど、反対に「まだ何も見つけていないから今治で見つけたい」という生徒も多いのです。

中には「数学は得意だが、人とコミュニケーションを取るのが苦手。そんな自分を変えたい」という生徒や、すでに高校に通っていたけれど、もう一度やり直したいと入学を決めた生徒もいるそうで、まさに多様な背景を持つ人が学び合う学校になりそうです。

「当然いろいろな確執も起きるだろうけれど、そのトライ&エラーをしっかりと見守っていく」と辻校長。

「多くの子どもたちが、周囲の大人たちの価値観やしがらみに絡め取られ、自分が本当は何をしたいのか、どう生きたいのかがわからなくなってしまっている。だからここでは、学校をハブとして多様な価値観と出会わせ、子どもたちのオーナーシップを育てていきたい」という言葉が印象的でした。

未知のことに挑戦し、遺伝子にスイッチを入れる

次に「遺伝子にスイッチが入る体験」と「ヒストリック・キャプテンシップの育成」という理念について。どちらもあまり耳慣れない言葉なので、岡田氏にその意味を聞きました。

岡田武史(おかだ・たけし)
FC今治高等学校 学園長

遺伝子にスイッチが入る体験というのは、未知のことに挑戦する中で新しい自分を覚醒させるということです。遺伝子スイッチというのは、遺伝子工学の第一人者であった故村上和雄氏が提唱した理論で、環境や努力など後天的要因が遺伝子のスイッチを作動させ、人を変えていくというものです。

岡田氏自身も初めて日本代表の監督になった時に、自分の遺伝子スイッチが入った経験をされたそうですが、人間が成長するのは、困難やプレッシャーを乗り越えた時。生徒たちにも自分の遺伝子にスイッチを入れていってほしいと言います。しかし、安心安全で便利な環境に守られていては、そんな体験はできません。

そこで、毎週水曜日の午後に行われるのがヒューマンディペロップメントプログラム。これは自然と向き合い、あえて困難を体験する時間と言ってもいいでしょう。

すでに自身が経営する企業「今治.夢スポーツ」でしまなみ野外学校を開催してきており、その実践をこちらでも生かしていきます。野外体験の1つが四国お遍路を自力で回るというもの。

今治から海路を使い無人島づたいに香川に渡るというかなりハードなルートを取りますが、3年間かけて完走する予定で、そのためにロープの結び方、火の起こし方、天気図や海路図の読み方から学びます。机の上で知識を得てわかったつもりになっていても、体を使って自分で体験したことには敵いません。

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