30馬力UP「マクラーレン750S」の真価は何か? THE MAGARIGAWA CLUBで確かめた走りの手応え

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750Sのデザインソースは、なんとホオジロザメだという。たしかに、フロント部分にボリューム感があり、そこからキャビンを経由してリアエンドにいたるまで、ぎゅっとしぼられていくような、水(空気)の抵抗が少なそうな、説得力を感じさせるカタチだ。

750Sでは、従来の720Sよりリアエンドを少し延ばすことで、より空力特性を向上させるとともに、テールパイプの位置を変更し、リアスポイラーの大型化を実行している。空力を追求していくと、クルマが生物に近づいていくようなイメージはおもしろい。

中央・上部に集約されたテールパイプも特徴的(写真:マクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社)
中央・上部に集約されたテールパイプも特徴的(写真:マクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社)

空気の流れが、エンジン性能の向上にも大きな役割を果たすのは、ご存じのとおり。750Sは、マクラーレン車の常として乗員の背後にエンジンを搭載する、いわゆるミドシップスポーツのため、そこまで適切な量の冷却気を取り込み、同時に熱気を効果的に排出するための設計も重要なのだ。

本領発揮は「トラック」モードで

1.2トンの車重に800Nmもの強靭なエンジントルク。メーターのバイナクル(日除けのフード)に設けられたドライブモードセレクターで、市街地向けのドライブモードからスポーツに切り替えると、弾けるような動きが堪能できる。750Sの本領発揮ともいえ、私が好むモードだ。

サーキットでは、さらにその上の「トラック(サーキット)」というモードを選ぶと、左右の駆動輪の差動装置に制約が入るなど、コーナリング能力がさらに上がる。サーキットで楽しめることを強調するモデルだけに、これはすばらしい(けれど、市街地では使わないのが無難である)。

750Sの最高速度は時速332kmに達すると発表されている(写真:マクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社)
750Sの最高速度は時速332kmに達すると発表されている(写真:マクラーレン・オートモーティブ・アジア 日本支社)

全長4569mm×全幅1930mm×全高1196mmのボディと、2670mmのホイールベースの組み合わせ。サーキット走行を重視しているというだけあって、運転席からの視界はいい。周囲が把握できなければ怖くて速度を上げられないから、スーパースポーツカーにとって視認性の高さは重要なのだ。

マクラーレンでは、ユーザーを対象にサーキット走行を教えてくれる「ピュア・マクラーレン」なるイベントの日本開催も、2024年秋をめどに計画していると聞く。価格は3930万円という750Sを手に入れられる人は、ぜひサーキットを経験してみることを勧めたい。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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