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「テスラ vs スウェーデン労組」が映す日本の特徴 自動車整備士や港湾労働者が相次ぎストライキ

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日本とは対極にある社会の仕組みが、日本の特徴を映し出す。

労働組合IFメタルのメンバー
テスラの拠点前に立つ労働組合IFメタルのメンバー(2023年12月16日、ストックホルム、写真:Felix Odell/The New York Times)

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郵便局員が米テスラの電気自動車(EV)に付けるナンバープレートだけを配達拒否、港湾労働者はテスラ車の荷下ろしをボイコット──。

スウェーデンで昨年秋に勃発したストライキは、一企業どころか産業、国境を超えた広がりを見せた。欧米各国では、世界的なインフレを受けて賃上げを求めるストライキが起きたが、それとは様相を異にする。

スウェーデンの機械金属産業労働組合「IFメタル」に加入する自動車整備士たちが求めた労働協約締結を、テスラが拒否したのが発端だ。

環境意識の高いスウェーデンではEV普及率も高く、テスラも自前の自動車整備工場を設けているが、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は労働組合に否定的。米国の工場では労働組合が組織されていない。

が、労使自治を徹底するスウェーデンでその流儀は通用しなかった。労働者の9割において、賃金をはじめとする労働条件は、雇用主と労働組合が結ぶ労働協約に基づいている。法律では最低賃金すら定めておらず、労働協約で産業・職種ごとに決められた最低賃金が裁判などでも基準と見なされている。政府が賃上げにまでくちばしを挟む日本とは対極にある。

賃金は取引価格の前提

郵便局員や港湾労働者などの対テスラのストライキは、テスラ整備工場のIFメタル組合員によるストライキに呼応するものだった。そして、ストライキはデンマークなど北欧他国の港湾労働者にも拡大した。マスクCEOが「Insane(ばかげている)」と評したこの事態は、紛争中の労働者を他企業の労働者が支援する「同情スト」の一種だが、当事者には同情にとどまらない危機感がある。

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