ヴィーショラワインは、食後のデザートワインとしてふるまわれる。
甘みの中に、サクランボが持つ爽やかさが引き立つ。飲みやすさと華やかさに加え、ヴィーショラのしたたかさも感じさせる。ヴィーショラワインの甘みはのどの奥に残るくどさがない。筆者はあまり甘い飲み物が得意ではないが、舌の上で転がしてゆっくりと味わいたい気持ちになった。
「ヴィーショラはこの土地に住む人々にとって、とても身近な存在なんです。貴族や農民といった区別なく、すべての人々がこのワインを愛してきました」とジゼッレさん。
「薬効を期待して製造」の過去
ヴィーショラワインがいつ頃から造られていたのか正確な記録はないが、薬効を期待されていたという側面もありそうだ。1583年にイタリアの医師、ピサネッリが書いた食事療法の本の中で、ヴィーショラは「コレラの解熱、痰の粘性を下げ、食欲を増進させる」とある。
実際、ヴィーショラにはポリフェノールとアントシアニンが豊富で、抗酸化作用や抗炎症作用がある。鉄分やマグネシウム、カリウム、食物繊維も多く、美肌やアンチエイジング効果も期待できる。
農民の間では、強壮効果や媚薬効果を持つワインとして、「魔女の血」と呼ばれていた一方で、貴族や聖職者たちの間では、「天使のワイン」と呼ばれ、教会のミサ用に使われたこともあるという。
家族の絆を大切に、先祖代々受け継がれてきた味を守っているカルディナーレ家だが、この18年の間には、たくさんの苦労があった。その1つが、父の代から大切に育てていた300本もの木を、何者かに無断で伐採されてしまったという悲しい出来事だ。
「近所の人の電話で急いで畑に行くと、すべての木が無残にも切られていたんです。こんな悪意がこの世に存在するなんて……」と、愕然としたと言うジゼッレさん。いまだに犯人は見つかっていない。
しかし彼らはヴィーショラワイン造りを諦めなかった。
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