ヴィーショラの果実は小粒で、そのまま食べるとかなり酸っぱい。
「母はヴィーショラ独特の酸っぱさが好きで、ひょいっと実を摘んで、よく食べていたものです」。そう言って、ルーカさんの妹のジゼッレ(55)さんは笑う。
50日ほどかけじっくり発酵
ワイン造りは、6月に真っ赤に熟した実を手作業で収穫するところから始まる。収穫した実と砂糖を広口の瓶に入れ、50日ほど太陽に当てながら発酵させる。
「私が子どもの頃は、どの家にもこの瓶詰めがあったんです。子どもたちは大人の目を盗んで、ヴィーショラの実を取り出して食べていました。砂糖漬けになったヴィーショラはとっても甘くて、あめ玉みたいなんですよ」(ジゼッレさん)
瓶をときどき揺すりながら、果肉から真っ赤なシロップが出てくるのを気長に待つ日々。カルディナーレ家にとってヴィーショラワインは、家族で過ごした幸せな記憶と、切っても切れない関係にあるようだ。
最初の発酵が終わると、ワインの素ともいえるモストというブドウ果汁を加え、6カ月間かけてワインへと変化させていく。仕上げに、途中の工程で取っておいたサクランボ果汁を加えて、樽の中で熟成させる。
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