JR東海「リニア」トンネル工事進んでも静岡は闇 首都圏では順調だが、静岡は知事と泥試合へ

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難波市長の信条は「ゼロリスクはない」。想定されるリスクを事前にできる限り洗い出し、その対策を考えておくべきという立場を取る。「大井川の水は1滴たりとも他県には渡さない」というゼロリスク主義の川勝知事よりははるかに合理的である。それでも報告書がまとめた環境への影響の予測は不十分に映る。難波市長は「生態系への影響が出たら対策をするのではなく、生態系への影響を事前に推測し、どうするかあらかじめ考えておくべき」という話をしたが、委員からは「それは困難だ」という返答があったという。

静岡市 難波市長
1月21日の意見交換会後、取材に応じる静岡市の難波喬司市長(記者撮影)

中村座長は、「あまり細かく推測しすぎると、本当に起きると誤解されかねない」と説明している。「今回の報告書がパーフェクトなものとは思っていない。何年かけてもパーフェクトなものはできない。不確実性の中で決めていかなくてはいけない」。中村座長と難波市長、双方の考えを聞くと、事前の影響評価とその対策に関する程度の差こそあれ、同じようなことを話しているように感じられる。お互いが納得する妥協点はどこかに見出せそうだ。

JR東海と川勝知事、深まる溝

8市2町の首長との意見交換については、中村座長、染谷市長がともに「理解が深まった」と話し、有意義な会議だったことが感じられた。流域市町の首長たちからは国の関与をもっと強くしてほしいという発言があったという。村田局長は「環境対策をJR東海だけに任せるのではなく、国としてもJR東海の取り組みを継続的に監視していく。そのための体制作りについて現在検討している」と話す。ムードは悪くない。

1月24日、JR東海はリニア事業に関する報道向け説明会を静岡市内で開催した。年末年始にかけて川勝知事から出されたさまざまな発言が、JR東海が発表している事実と異なる点が多くあり、誤解を与えかねない状況になっているため、あらためてJR東海の考えを直接説明したというのがその趣旨だ。

静岡マスメディアの理解は深まったかもしれないが、川勝知事はそうではなかった。川勝知事は29日の定例記者会見で、「事実誤認はない」と反論。両者の対立構造が鮮明になり、その溝は深まるばかり。首都圏のトンネル工事が順調でも、静岡では“トンネル”の出口がまったく見えない。

2月5日には県が生態系への影響など47項目の懸念について会見を開く予定だ。7日には村田鉄道局長が県庁を訪問し川勝知事と面談する。はたして事態の打開につながる一歩となるか。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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