名古屋「味噌煮込みうどん」香港で大成功のワケ 「大久手山本屋」香港1号店は1日600人が訪れる

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さて、香港の店だが、大圍の1号店は45席で、海港城の2号店は85席。鶏肉と玉子が入った定番の「親子味噌煮込み」は、日本よりも200円高い1850円。煮込みうどんは味噌以外にカレーやおすましも用意しているほか、味噌おでんや味噌カツ、どて煮、手羽先唐揚げなど名古屋名物も豊富だ。

「大久手山本屋」香港2号店の店内。窓からはシーサイドの夜景が眺められる(写真:大久手山本屋)

海外勤務を目標に頑張る名古屋のスタッフたち

「香港で“名古屋”という文字を見たことがないんです。名古屋の食文化を伝えることで、香港の人々に名古屋へ行きたいと思っていただければ。名古屋であんかけスパや台湾ラーメンの店を営む仲間たちに期間限定でメニューを提供することも考えています」(青木さん)

香港の店には、日本人の職人が1人ずつ在籍している。前に書いた通り、客は日本の職人による手作りの味を求めて店に来るのと、接客などのサービス面においても日本のクオリティをキープできるようにチェックする役割も兼ねている。現地の日本人スタッフの仕事は多く、責任も重大である。現地での暮らしや言語の課題も多い。ところが、名古屋の店で働くスタッフには海外勤務を希望している者もいるという。

名古屋市千種区にある「大久手山本屋」本店(筆者撮影)

「特に若い世代は世界で通用する人財になる重要性をわかっていますね。円安もあり給料面の魅力もありますが、それ以上に海外で挑戦して成長していきたいという想いを持つスタッフが多いです。その想いに応えて、日本人が海外で活躍できる場所を創っていきます」(青木さん)

今年4月にはインドネシア・ジャカルタに出店することも決まっている。ショッピングモール内にある香港の店とは違い、ジャカルタは路面店。愛知県産の肉や野菜、三河湾や伊勢湾で獲れた魚介などを使った炉端焼きをメインに、締めに味噌煮込みうどんを食べるというスタイルとか。

インドネシアは、総人口の9割近くをイスラム教徒が占めているが、日本国内でムスリム対応のメニューを提供してきた経験も存分に生かされることだろう。名古屋の味噌煮込みうどんがアジアを席巻する日も近いかもしれない。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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