早朝の貴重な時間が電話対応で奪われるし、話し中で通じないと、保護者のストレスにもなる。「電話のほうが詳しく子どもの様子が聞ける」「クラウド上のフォームなどでのやりとりになると、悪用する子がいる」といった声を学校現場からはよく聞くが、ものごとの優先度をもっと考えるべきだ。
なるべく電話で忙殺されないようにして、気がかりな子や家庭にだけ電話などにすればよいではないか。そう多くの子が悪用するわけでもないだろうし、電話でもなりすましはゼロではあるまい。
保護者とのやりとりで紙ベースのものが残っている学校も多い。「来月の遠足に参加しますか?押印のうえ、切り取り線から下を提出してください」といった連絡はざらだ。ちょっとした手間だけど、面倒くさいし、実印ではないハンコに信憑性は低い。
入学シーズンになると、家庭調査票や健康調査票で、住所や連絡先などを何度も紙に書かされる。市区町村立小中学校なら、保護者の住所を教育委員会は知っているはずで(現に入学案内の連絡は教委から郵送で来る)、どうしてまた手間をかけさせるのか?
電話と紙が大好きな学校・教育委員会
職員室もローテクな運用を続けている例は少なくない。下記の図2を見てほしい。

冒頭で述べたように、個人メールすら使えない、使わせない学校・教育委員会がある(文科省調査ではメアドが附与されていない学校は21.9%だが、附与されている学校でも使えない例はある)。チームで情報共有しやすくするために学校代表メールを原則とするといった運用をするのは1つの手だが、おそらく個人メールもない学校では電話でのやりとりが多くなっているのではないか。
私の場合、研修講師などをしていると、メールのやりとりだけで十分なのに、依頼文書を郵送したいという教育委員会や学校は多いし、講師を務めるという承諾書を押印して郵送せよというのもざらだし、「メールだけでは失礼なので電話でご挨拶したい」と言ってくる人までいる。
電話やオンライン会議で詳しく相談したほうがよいときはそうしているが、電話好きな人は相手の時間を奪っている感覚をもっと持ったほうがよいと思う(不要不急の電話で相手を拘束するほうがよほど失礼だと思う)。
また、紙ベースが多いのは、教職員間もそうだし、学校と教育委員会の間もだ。例えば、出張費の精算で交通経路を教員は手書きでメモして事務職員がシステムに入力しているといった例もたまに聞く。DXなどと言う以前の学校、教育行政がまだまだ多いことが今回の調査からもわかる。
※関連記事:学校の「過酷な勤務実態」に危機感、GIGAスクール構想の下での校務DXの可能性
なぜ、学校は時代遅れのやり方を続けるのか
かつての学校は、時代、社会の最先端を走っているところがあった。オルガンやピアノ、天体望遠鏡など、家庭にはないものが学校にはあった。修学旅行では家の人には連れて行ってもらえないところを訪問できた。
大学・短大卒の人材がわずかだった時代に、教員はよく勉強してきた人として、保護者や地域の人から尊敬されていた。実態はもっと多様だっただろうが(地域や家庭、人によっても多少違ってはいただろうが)、ざっくり申し上げて、そういう側面もあったと思う。
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