「紅白歌合戦」最低視聴率でも評価悪くないワケ YOASOBIとK-POPアイドルの圧巻のパフォーマンス

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J事務所に頼れなくなった紅白は、もはや後戻りのできない、新生紅白になるしかなかった。テレビが生み出した歌手はもういない。でも、その代わりにすごい才能たちを若者たちが見出していた。さらにK-POPにはJ事務所とは違う踊りも歌も完璧にこなす才能がひしめいている。テーマに掲げたのは「BORDERLESS」。いままでの境界線を取っ払って、掟破りのキャスティングをするしかない。

「新しい紅白」に生まれ変わることができたのか

YOASOBIとグループアイドルたちの「アイドル」と題した曲でのパフォーマンスはつまり、新しい紅白が見出した出発点だったのだ。

J事務所のファンたちは、紅白に出なくても配信で逆にたっぷり推しの歌を堪能することができた。視聴率にはっきり影響するほど紅白から去ってしまった。

だが紅白は新しい紅白に生まれ変わることができた。「BORDERLESS」は2023年のテーマワードだが、ある意味新生紅白が今後しばらく中心に据えるコンセプトになるはずだ。

紅白の視聴率が今後も下がり続けるのは仕方ないと思う。おそらく男の子たちはNintendo Switchでマリオの新作か、いまや小学生でも珍しくない自分用のスマホでYouTubeに熱中していたのだろう。上の世代だって、年越しの風物詩なんてもう大してこだわっていないので、大晦日にテレビを消してしまうのかもしれない。

そんな中でも年末のNHK紅白には意義がある。テレビが作ったのではない音楽シーンをテレビで共有する年に一度の機会として、今後も残り続けてほしいと思った。

大いに評価している今回の紅白だが、一点だけ猛批判したい場面があった。純烈の歌でNHK+へのQRコードを推しまくって放送したことだ。彼らにQR柄の衣装を着せる悪趣味な演出まであった。純烈にも失礼だし、視聴者としても萎える場面だった。こんなこと現場が思いつくはずがないのでおそらく上層部の指示だろう。来年からの紅白の一番の懸念は、視聴者の気持ちが見えない上層部だと思う。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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