2024年の日経平均は「3万6000円台到達」が可能だ 半導体市況の回復と円安が引き続き強い追い風

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また、名目GDPが(付加価値の単価とも言うべき)GDPデフレーターの上昇を伴って拡大し、なおかつ長期金利の水準を上回っていることは注目に値する。直近4四半期において名目GDPは4%超の増加基調にあり、一気に600兆円の大台を視野に捉えている。GDPデフレーターの上昇は、輸入物価上昇を積極的に価格転嫁されていることに加えて、労働コスト増加が効いている。

毎月勤労統計ベースの所定内給与は1%台後半にすぎないものの、それでも約30年ぶりの上昇率であり、デフレ脱却を象徴する数値だ。この間、日銀が粘り強く金融緩和を継続していることで、名目GDP成長率と10年金利の差は拡大しており、マクロ的にみれば「調達金利を上回る投資機会が豊富に存在する」状態になりつつある。

もしその状態が長く続くと人々が確信するなら、企業は借り入れを増やし投資・雇用を拡大し、同時に投資家は株式の購入を進めるのが最適解になる。投資家の取ったリスクが報われやすい環境であると換言することもできるだろう。

年間9兆円強ペースの自己株買いが株価上昇に貢献

日銀が大幅な利上げを実施すれば一気に話は変わってくるが、現在得られている情報から判断すると、2024年の賃金上昇率は良くも悪くも2023年と同程度が見込まれている。その程度の賃金インフレであれば、利上げにつながる可能性は低い。したがって、「名目成長率>長期金利」の関係が続く可能性が高い。

そして忘れてならないのが、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの危機から脱却したい企業を中心に、資本効率の改善が期待されることだ。直近1年半程度、東証の要請が奏功する形で、日本企業は年間9兆円強のペースで自己株買いを実施し、需給、バリュエーションの両面で株価上昇に貢献している。

アメリカ経済が景気後退に陥るなど事業環境が大幅に悪化しない限り、こうした傾向は2024年も持続が期待される。そのようなマクロ環境の下でTOPIXのEPS(予想1株利益)成長率は1年、2年先ともに10%をやや下回る伸び率がコンセンサスとなっている。その通りに進捗すれば、日経平均の3万6000円は十分に達成可能と考えられる。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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