富士山登山鉄道「LRTありきでない」発言の矛盾 水面下では事業化に向け専門家会合が同時進行
こんなエピソードも紹介された。富士山は2013年に世界文化遺産として登録されたが、登録に際して「人が多く来訪者のコントロールが必要」とユネスコの諮問機関であるイコモスから注文を付けられていた。登録前年となる2012年のの5合目来訪者数は231万人だったが、2019年には506万人に増えた。来訪者は減るどころか2倍以上になった。イコモスが求めるコントロールがまったくできていない。
さらに、今夏にイタリアが気候変動やオーバーツーリズムからベネチアを守る努力が足りないとして、ベネチアを危機遺産に登録するかどうかをめぐって協議されたことも話題となった。「富士山がそうならないよう、私たちは最悪の場合に備えてあらかじめ手を打つ必要がある」(長崎知事)。
富士山の現状に関する説明に続き、知事は会場に2つの同意を求めた。「富士山が地元の宝、日本の宝であるということに対して、私たちの間に意識の違いはないと思う」、「富士山の世界文化遺産としての価値を後世に引き継がないといけないということに反対する人はいないと思う」。知事が会場に対して「これらの点において私たちとみなさんは共通している。いかがでしょうか」と問うと大きな拍手が起きた。
電気バスにも「大いに関心がある」
登山鉄道構想の反対派も拍手をしたかどうかはわからない。しかし、富士山が日本の宝であり、その価値を守らなくてはいけないという理念に反対する人はいないだろう。その点において、知事は登山鉄道構想の賛成派と反対派の共通認識を明確にすることには成功した。
「ではどうやって共通の目標を実現するか。その方法を議論したい」として、知事が「県の案」として持ち出したのが登山鉄道構想である。その内容は9月19日付記事(富士山「登山鉄道」、山梨県がこだわる真の理由)にあるとおりだが、それだけではなく、「LRTは街中にも延ばせる」として、富士山麓から河口湖方面などへの延伸の可能性についても付け加えた。1400億円とされる総事業費については、「すべて県が負担するわけではない」として、国の補助金や民間企業の参加を示唆した。
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