JR四国「瀬戸大橋」、海の真上の保守作業に密着 開業から35年、塩害対策や強風が悩みの種
管理路を離れ、社員は線路内へ入って点検を行う。列車の往来があるため、列車見張員を付け、列車の走行方向と対峙するようにして進む。先ほどの通路はJBの管理下だが、鉄道施設はJR四国の管理下となる。ただ、瀬戸大橋内はJBの管理部分が多く、「鉄道関係の作業においてもつねにJBとの調整が必要で、それをもとに作業予定を考える必要がある」とのことだ。
全般検査では構造物全体の異常がないか、グレーチングの固定具に異変がないかなどを見ていく。レールの土台となる橋梁との締結部も橋のたわみに対応したここだけの特別仕様だ。場所柄塩害などが気になるが、その影響については「対策がしてあるのでそこまで影響はないが、塩害よりもむしろ強風や高速道路からの飛来物が意外に多い」と須賀氏は語る。
老朽化も課題に
開業から35年が経った今、課題となっているのが各部の老朽化だ。「35年を迎え、塗装の塗り替えや修繕も実施しているが、ここでもJB側との調整が必要なほか、橋梁外部や下部の保守点検に使う『桁外面作業車』が他の作業箇所との共用なため、当社だけの都合で進めることができず、緻密な作業日程の調整が必要」(須賀氏)。
計画を立てたとしても当日の風速が10mを超えていたり、強風が見込まれたりすると作業は行えないうえ、台風の接近時は作業用に組み立てた足場を一時撤去したりと、「思い通りいかないことも少なくない」と須賀氏が苦笑する。ほかにも「夏場は涼しいが、冬場の寒さは言葉に表せないくらい寒い」。それでも橋上から見る風景は特別なものがあるという。
同じく本四備讃線を守る保線区、電気区にも話を聞いたところ、やはり一同に口にするのが「橋の老朽化」だ。高松保線区の橋本克樹助役は「桁端部に発生する大きな角折れに追随するよう設計されたレール締結装置や、橋の伸縮に合わせてレールのつなぎ目を最大で±750mmスライドさせ調整することができる “1500形軌道伸縮装置”など、国内でも瀬戸大橋にしかない特殊な部品や設備があるが、開通から35年が経ち順次交換を実施、あるいは計画する時期に来ている」と話す。開業当時に在籍していた社員のほとんどがすでに退職していることもあり、「敷設当時の図面を入念に確認しながら綿密な交換計画を立てるとともに、維持管理に関する技術継承についても確実に行っていく必要があると感じる」という。
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