10月開始の「年収の壁」支援、受けられる人の条件 今年は「106万円/130万円」を超えてもいい?
加えて年収106万円の壁については来年10月から加入対象者の拡大も予定されています。社会保険制度はいずれ抜本的な改革がなされ、遅かれ早かれ扶養内という働き方を選択しにくくなっていくのは間違いないでしょう。
106万円にしても130万円にしても、今年や来年は年収が壁を超えてすぐに社会保険加入を迫られることは減るでしょうが、それはあくまでも目先の対策に過ぎない可能性を意識しておくのが賢明です。
長期的には社保加入のメリットは大きい
そもそも、社会保険に加入して厚生年金保険に入れば、その分老後の年金は上乗せされます。健康保険も、自分で加入すれば病気やケガで仕事を休業したときの「傷病手当金」や、出産のために産休を取得したときの「出産手当金」の対象になります。
特に老後の年金は現役時代に働いて保険料を納めた分に応じて年金額が上乗せされ、それが終身にわたって続きます。これは長生きをするほどインパクトが大きいものです。
かりに年収106万円で厚生年金に加入すると自己負担する保険料は月に約8100円ですが、20年間加入すると年金額が約10万7千円増えます。20年間で負担する保険料の総額は約200万円になりますが、老後に20年以上受け取ると、年金の上乗せ総額も200万円以上になります。
現行の保険料や料率を前提にした計算ですので将来に変わる可能性はありますが、現在の平均寿命(男性81歳、女性87歳)から考えると「元を取る」のはものすごくハードルが高いわけでもなさそうです。
損得勘定を抜きにしても、体力面や健康面を考えると年金額が多少増えるのは老後のゆとりにつながるかもしれません。65歳以上の高齢者の就業率は25.2%と過去最高を更新しており、生活のために老後も働き続ける人も増えているようです。もし、年金だけでは足りないから働くのだとすれば、現役世代のうちに少しでも年金額を増やしておけたら、老後にどれくらい働かなければならないかも変わってくるかもしれません。
しかし今、扶養内で働いている人には、家計収入を上げたい一方で、育児や介護などでたくさんは働けないという事情を抱えている人が多いのも事実です。日々の生活を支えるのに精いっぱいで、将来のメリットを踏まえて働く余裕などないという人もいるはずです。今回の対策をどのように活用するか、将来的に年収の壁を気にせずに働くかどうかは難しい問題です。
年収の壁を含め社会保険制度が今後見直されていくにあたっては、年金制度だけでなく、男女共同参画や働き方改革など多面的な理解のうえで、制度設計が進められていくことを期待したいと思います。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら