「10月に住民33人が襲われた秋田」被害の実情 県の担当者は「名前を明かさないで」と懇願

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食べるものが激減したクマは、集落に植えられているクリやカキなどに引き寄せられ、人の生活圏に接近してきたと考えられている。

秋田県は住民に対し、早く実を収穫するよう呼びかけているが、

「昔のように一生懸命にクリやカキを取る人も少なくなっており、なかなか難しい」

と担当者は言う。

ただ、それでも今年は被害が多すぎる、と担当者も首をかしげる。

「ブナの実の凶作だけがすべての原因ではないと思います。そもそも最近のクマは山奥ではなく、人里近くに住みついているという話もあります」

クマが冬眠に入るのは、あと1カ月ほど先になる。

「今後、状況がどうなっていくのか、予測がつきません」

東京都の町田市でも

クマの生息範囲が広がりつつあるのは、東北地方に限った話ではない。東京都町田市で10月18日、初めてクマが目撃されたのだ。

場所は町田市西部にあるアウトドア施設「Nature Factory 東京町田」で、テントサイトや野外炊事場のそばを流れる境川の茂みにクマが現れた。施設の笠倉秀貴所長は、当時の状況をこう語る。

「高齢者2人が登山道を下ってきたところ、5、6メートルほど離れた沢筋の方向から、がさがさと木が揺れる音を耳にしたそうです。何かと思ったら、黒い動物が急斜面を登り、その途中で脚を止めて、登山者の方を振り返った。そのとき、お互いに目が合って、イノシシではなく、クマだということがわかった」

クマが目撃されたのは、東京都八王子市と神奈川県相模原市に挟まれたエリア。両市ではクマが出没しているので、そのうちの1頭が町田市を通過したのではないか、と笠倉所長は推測する。

「このあたりの森はヒノキやスギで、クマが食べるものがないんですよ。フンが見つかったという情報もありません。エサを探して歩いている最中にこのエリアに入り、たまたま人間と出合った、という感じがします」

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