注目の「神山まるごと高専」、学生も教員もゼロから手探りで進む開校後のリアル 大蔵峰樹校長「ベンチャー企業のようなもの」

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「10億円もの出資なので、各社とも真剣に検討のうえ決めていただいたと聞いていますが、参画企業の皆様はこれまでの人材確保や教育に危機感を抱いていたのではないかと思います」と、大蔵氏は話す。

神山まるごと高専の1期生たち

1期生は、学校がある徳島県だけでなく、東京、北海道、京都、ロンドン(日本人学校出身)などから計44人の学生が集まっている。男女はちょうど半々。出身だけでなく、趣味嗜好や将来の希望もさまざまだという。

「本校の入試は、テーマに基づいたものづくりのワークショップを行い、チームビルディングの動きやアウトプットの力など、総合的に判断しています。そのため、学生のバリエーションは富んでいますが、学校とのマッチ度を重視して選考していることもあり、比較的コミュニケーションが上手で何事も前向きに捉え、言われるがままではなく『何のため』を自分なりに思考して取り組める学生が多いですね」

「やぶをかきわけ道をつくっていく経験」がいちばんの勉強

しかし、そんな学生たちも、この半年は相応の苦労があったようだ。同校はとくに学校生活におけるルールを設けず開校した。放課後も基本的にどう過ごそうと自由だ。開校1年目で全寮制ということもあり、学生たちはいろいろなことを自分たちで決めなければならず、先輩もいない中で戸惑っている様子がうかがえたという。

「彼らはこれまで決まったルールの中で生活をしてきたので、自由について真剣に考えるのは初めての経験。やりたいように過ごしてみて『ルールがないとやっていけない』『ルールを決めようとしたら文句を言われてやる気をなくした』といった学生も出てきて、全体会議に発展したりしていましたね。自分たちで決められる自由とその苦しさを痛感した半年だったと思います。最近では、それぞれの自由についての考えを形成し始めてきたと感じています」

そうした戸惑いは、教職員をはじめとしたスタッフも同じだったと大蔵氏は打ち明ける。

「新設校なので、ここに来れば何かいいことがあるだろうという思いや理想を抱くのは当然のこと。しかし、実際に学校が始まれば、手探りで学校運営をしていかなければなりません。スタッフもゼロからつくっていく大変さを感じた半年だったと思います。今後は、多様性に富んだ学生たちであるゆえに、個人の志向や学力の差にどう対応していくかが課題。そこを乗り越えていくことが学校としての力の見せどころになると思っています」

新たな教育活動で注目される神山まるごと高専。その試みはまだ始まったばかりだが、大蔵氏はこう語る。

「私たちはベンチャー企業のようなもので、スタッフも手探りでいろいろな大人がいる。学生たちはいわば、舗装されていない道を進んでいくような状況に置かれているわけですが、それって社会そのものですよね。やぶをかきわけ自らが道をつくっていく5年間の経験が、いちばんの勉強になると私は考えています」

(文:國貞文隆、写真:神山まるごと高専提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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