迫るノーベル経済学賞発表、重視される傾向とは 過去掲載記事で予習、清滝信宏教授の受賞あるか
いよいよ2023年のノーベル経済学賞(アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞)が10月9日の18時45分(日本時間)に発表される。経済学に貢献した研究を選び、経済学の潮流を映し出してきたノーベル経済学賞。今年は誰が、どんな研究が選ばれるだろうか。
東洋経済オンラインから、ノーベル経済学賞にまつわるオススメの記事を挙げてみた。
リーマン・ショックへの処方箋を示す
日本人で初の受賞が期待されるのが、アメリカ・プリンストン大学の清滝信宏教授だ。金融危機の際、中央銀行が資産を買い入れることで、市場の流動性を回復できることを示した。
東洋経済が行なった2021年秋のインタビューでは、自身の理論からアメリカ当局との関わり、日本経済への提言まで100分にわたって語っている。
果たして清滝教授の受賞はあるのか。ここ数年の受賞研究から浮かび上がるのは、「現実の経済社会との結びつき」を重視する傾向だ。2019年以降の受賞者とその評価ポイントを見ていこう。
2019年 政策効果を実験(RCT)で明らかにする
2019年に経済学賞を受賞した、アビジット・バナジー氏、エステル・デュフロ氏、マイケル・クレマー氏の3氏は、途上国で貧困問題に対する政策の効果を示すのに、医療で行われている「ランダム化比較試験(RCT)」の手法を取り入れたことが評価された。介入対象とそうでない人をランダムに割り当て、成果を比べる。RCTは開発経済学を変貌させ、政策の形成過程にも影響を与えた。
2020年 価値を最大化するオークション理論
2020年受賞のポール・ミルグロム氏とロバート・ウィルソン氏は、オークション理論への学術的な貢献に加え、実際にオークションの制度を設計し、成功させたことが評価された。
ミルグロム氏とアメリカ・スタンフォード大学で同僚だった小島武仁氏(現・東京大学教授)が安田洋祐氏(大阪大学教授)と、受賞者たちの人となりや、経済学界の動向を縦横無尽に語った。
2021年 データから因果関係を測る「因果推論」
2021年は3氏が選ばれている。デビッド・カード氏は労働経済学で「最低賃金を上げても雇用は減らない」とする実証的な研究をはじめ、著名な成果を挙げた。すでに起きた状況のなかから「他の条件は近いのに1つの要素(例えば最低賃金)だけが異なる」という状況を用い、他の要因を取り除いて最低賃金の影響を取り出す「自然実験」によって分析した。
ヨシュア・アングリスト氏、グイド・インベンス氏はデータから因果関係を分析する「因果推論」の手法を洗練させた。
2022年 銀行の機能と「取り付け」のメカニズム
2022年はバーナンキ・元FRB(米連邦準備制度理事会)議長が受賞したことが注目を集めた。バーナンキ氏は1930年代のアメリカの大恐慌を分析し、銀行の破綻が大きな影響をもたらしたことを明らかにした。同時に受賞したダグラス・W・ダイアモンド氏、フィリップ・H・ディビッグ氏は銀行取り付けが起きる仕組みと回避する方法を理論化した。
さらに、銀行取り付けのメカニズムと対応策は、2023年3月にアメリカで相次いだ銀行の経営破綻でも再現された。
3氏の拓いた「銀行・金融」をめぐる研究の延長線上に位置付けられるのが、冒頭にインタビューを紹介した清滝氏の成果であるため、同じ分野で連続受賞の可能性は低いかもしれない。ただ、清滝氏が有力候補であり続けることは間違いないだろう。
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