リーマン危機の淵から世界を“救った"経済学者 スペシャルインタビュー/プリンストン大学教授 清滝信宏

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「バブル」や資産デフレの構造を解明し、金融危機に対応した中央銀行の政策も学術的に裏付けた。希代の理論家が語った白熱の100分。

きよたき・のぶひろ 1955年大阪府生まれ。78年東京大学経済学部卒業。米ハーバード大学経済学博士。米ウィスコンシン大学助教授、米ミネソタ大学准教授、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授などを経て、2006年から現職。97年日本経済学会・中原賞受賞、20年文化功労者。(撮影:尾形文繁)

市場金利の調節ではなく、中央銀行が大規模な金融資産購入とお金の供給を通じてマーケットの流動性を高める「非伝統的な金融政策」。リーマンショックの鎮火に貢献し、今回のパンデミック(感染症の世界的流行)でも復活して金融危機を封じ込めた。

その理論化を主導したのが、清滝信宏・米プリンストン大学教授だ。日本人として初のノーベル経済学賞受賞も期待されている。「マクロ経済学の改革者」が、自身の理論から米当局との関わり、日本経済への提言までを語った。

──2008年のリーマンショックに米国が対応できた背景に、清滝さんの経済理論があったといわれています。そもそも、貨幣経済に関心を持ったのはなぜですか。

宇沢弘文先生のゼミに入っていた影響が大きい。宇沢先生のやり方は少し変わっていて、学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う。普通、大学の学部生がそんなことをしても大抵うまくいかない。僕らは、うんうんとうなりながら、一貫性のあるモデルを作ろうといろいろ努力した。ほとんど失敗したが、とても多くのことを考えた。

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