江ノ電の「日本一有名な踏切」を作った会社の素顔 鉄道・道路向け機器が主力、日本信号の工場内部

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一方、久喜事業所の敷地内では地面に引いた電磁誘導線に沿って自動運転カートが走行できるようになっている。スマートモビリティ営業部の阿部直孝係長は「信号やバス停、時刻表などと連携できるよう開発している。路線バスやトラックの自動運転に信号とセンサーの技術を応用していきたい」と話す。

同事業所には、研究・教育の拠点となる「安全信頼創造センター」も設けられていて、展示スペースには実際に作動する踏切が再現されている。

台湾にもスラムダンク踏切

海外事業は台湾やバングラデシュ、インドなど30の国と地域で展開する。2022年にはフィリピンのマニラ地下鉄、エジプトのカイロ地下鉄の信号システムといった大型案件を受注した。

台湾では2020年に完成した台湾鉄路南廻線の電化事業で、踏切設備や列車検知装置、中間閉塞装置、転轍機などを担当した。2023年8月には、南廻線の北に連なる花東線で複線化に伴う信号設備の移設工事を受注した。

南廻線・太麻里駅の近くにも江ノ電の鎌倉高校前を彷彿とさせる、海を背にした踏切がある。

台湾鉄路南廻線 太麻里駅付近 踏切
台湾鉄路南廻線・太麻里駅近くの踏切。台湾のスラムダンクファンが撮影に押し寄せるという(写真:日本信号)

スラムダンクの主人公、桜木花道に由来する「櫻木平交道(桜木踏切)」との呼び名もあるようだ。現地の人によると「駅の近くでアクセスがよく、少なくとも10年以上前から人気のスポット。みんなヒロインの赤木晴子の真似をして写真を撮っている」という。アニメと同様、日本の踏切は海外の人々の暮らしの中に溶け込んでいる。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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