「リビア大洪水」国民が政府にブチギレている背景 湿原に加え、責任逃れの政治家に国際調査要求
地中海沿岸にあるリビア北東部のデルナを守るダムが、補修を必要としていたり、リビアを襲う暴風雨に対して不十分であったりしたことは、何年も前から知られていた。ところが、リビア東西の当局はどちらも、危険性に関する警告を無視していたようだ。
2010年にトルコ企業がダムの補修工事を開始したものの、リビアの司法長官、サディク・アル=ソールによると、その数カ月後に「アラブの春」の蜂起が始まり、工事は止まった。
リビアの国家監査官による2021年の報告書では、2つのダムの維持費として割り当てられた230万ドル以上の予算はまったく使われないままとなっていたことが明らかにされていた。
まともな警報もなく被害が拡大
住民やオブザーバーたちは、暴風雨の前に当局が住民に適切な警告を発していれば、壊滅的な死者数は防げたはずだと話す。
国連機関である世界気象機関(WMO)は先週、リビアの気象サービスは大雨と洪水に関する警報は早期に出したものの、「老朽化したダム」がもたらすリスクには対処しなかったという見解を示した。WMOによると、リビアの気象サービスの能力は、情報技術だけでなく「観測システムにおける大きな溝」のために制約を抱えているという。
デルナ在住の気象予報士、アティヤ・アル=ハサディは、実際に出された唯一の警報は、海の近くに住むデルナの住民に対して洪水の24時間前に避難するようにというものだったと話す。
しかし、その後に大部分が流出した市内の残りの地域については、当局が外出禁止令を出し、自宅にとどまるよう住民に指示していたと、複数の住民が語っている。
「人的被害の大部分は避けられたはずだ」。WMOのペッテリ・ターラス事務局長はジュネーブで記者団にそう語った。