期待される事務職員、「共同学校事務室」で教員や教頭らの負担は減るのか? 事務処理の適正化や事務職員の人材育成で成果

事務職員が注目されるようになった訳
2017年、事務職員の職務規定は「事務に従事する」から「事務をつかさどる」に見直され、これに合わせて「共同学校事務室」が制度化された。事務職員が注目された背景には、2つの政策課題があったと国立教育政策研究所の藤原文雄氏は説明する。

文部科学省 国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長/教育政策・評価研究部長
民間企業、国立大学勤務を経て、2010年から国立教育政策研究所 初等中等教育研究部 総括研究官。20年より初等中等教育研究部長、23年より教育政策・評価研究部長併任。専門は教育行政学。現在は、GIGAスクール構想実現に向けた調査研究、教育データ利活用の促進、多職種協働、教職員等指導体制の研究に従事。文科省「質の高い教師の確保のための教職の魅力向上に向けた環境の在り方等に関する調査研究会」委員、文科省中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」臨時委員なども務める
(写真:藤原氏提供)
「1つは、子どもの資質・能力を育み、一人ひとりの豊かな人生を実現するという課題です。そしてもう1つが、教職員を取り巻く環境が厳しさを増す中で、教職の魅力を向上させるという課題です。要は、投入できるリソースが限られる中、教育水準の向上を図りながら教職員の勤務負担軽減を図るという、難しい政策目標を同時に実現することが必要とされたのです。こうした状況があり、学校で大きな負担となっている事務の改善が検討されました」
事務職員は、小中学校などで原則必置。22年度の学校基本調査によれば、学校の事務職員数は小中学校では1校当たり約1人、高校では同約4人となっている。公立の義務教育諸学校における給与は、都道府県や政令指定都市が負担しており、そのうち3分の1を国が負担している。
「もともと事務職員は、教員とともに、学校における『基幹的職員』という位置づけでした。その位置づけの下、教職員、事務職員がそれぞれ専門性を生かしてチームとして学校を運営すればパフォーマンスが上がるのではないか、また事務職員は、教員および副校長・教頭の事務負担軽減に大きく貢献できるのではないかといった期待から、職務規定が変更されたのです」
17年の学校教育法改正により、事務職員は教諭と同格の「唯一の総務・財務等に通じる専門職」とされ、職務規定は「事務に従事する」から「事務をつかさどる」へと変更、「校務運営に参画する」という役割も期待されるようになった。
・事務をつかさどる:一定の責任を持って事務を管理する
・校務運営に参画する:教育および学校運営について積極的に意見を述べ、運営の一部を担当する
(出所:藤原氏の提供資料)