期待される事務職員、「共同学校事務室」で教員や教頭らの負担は減るのか? 事務処理の適正化や事務職員の人材育成で成果

出所:「共同学校事務室による学校事務改善の成果検証に関する研究」
(画像:藤原氏提供)
では、どのような自治体が成果を上げているのだろうか。教員および副校長・教頭の事務負担軽減については、都道府県よりも政令指定都市で成果を認識している割合が高く、「政令指定都市のほうが、指揮命令系統の仕組みから効率化を進めやすいのでしょう」と藤原氏は分析する。また、副校長・教頭の事務負担軽減について成果を感じている自治体の特徴については次のように語る。
「共同学校事務室のモデル案作成、室長を統括する総括事務長の配置、室長への研修、事務職員の権限の明確化、副校長・教頭から事務職員への事務の移行、教育委員会や行政部局での事務職員へのリーダー研修、事務職員の育成指標作成などを行っている県・市が、成果を感じている傾向がありました。この結果を見ると、教育委員会による戦略的な人事や事務職員のキャリアパスの明確化が大きなカギになるといえます。また、室長がマネジメントに力を注げるよう、室長の学校に事務職員をもう1人配置する加配措置も必要でしょう」
3つの都道府県の事務職員への調査からは、室長の適切なリーダーシップや助け合う文化のほか、校長の事務職員への期待、事務職員の知識やコミットメントなどの要因も事務改善において重要な要素であることがわかったという。このことから藤原氏は、「事務改善を中心とした働き方改革を進めていくには、教育委員会、事務職員、校長のジョイントアクションが必要であり、それぞれが役割を果たすことが成果へとつながっていく」と考えている。
事務職員は今後、多様な人材との協働もいっそう求められそうだ。23年8月末に文科省が公表した24年度予算の概算要求では、働き方改革の実現に向け、教員業務支援員や学習指導員の配置拡充のほか、新たに副校長・教頭マネジメント支援員の配置が盛り込まれた。22年度に実施した文科省「教員勤務実態調査」(速報値)でも、とくに副校長・教頭の在校等時間は長いことが明らかになっており、「事務の高度な管理を担う事務職員と、補佐を担うマネジメント支援員の協働により、副校長・教頭の事務負担軽減の加速や、本来のマネジメント機能の強化が期待できます」と藤原氏は話す。
一方、共同学校事務室を効果的に機能させるためには、事務職員の仕事の社会的な認知拡大も必要だという。
「事務職員は、公立小中学校に限っても3万人を超える大きな職業集団です。しかし、教育委員会の職員には一般行政出身者や教職員出身者が多く、学校の事務職員の仕事への理解が進んでいないことも課題です。事務職員がリソースを管理するという専門性を発揮しやすいように、権限をより明確化して戦略的人事をどんどん行っていくとともに、共同学校事務室の好事例を全国的にシェアしていく仕組みをつくるなど、事務職員が子どもたちにどんな貢献をしているのかを社会に発信していくことも重要だと思います」
(文:國貞文隆、注記のない写真:EKAKI/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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