円安や物価高でも格安「タイ鉄道の旅」の醍醐味 バンコクから日帰り、それぞれ特色ある4路線

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夜行列車といってもバンコク発は13時10分、ナコンパトムまでは所要1時間、運賃20バーツ(約80円)、運賃は格安だが指定席である。冷房のない4人ボックス席の指定席なので、かつての夜行急行「十和田」や「津軽」を思い出してしまう。

スンガイコーロック行き快速 ハートヤイに行く乗客 ボックスシート
快速スンガイコーロック行きの車内。南部最大都市のハートヤイまで行くというお兄さんたち(筆者撮影)

この列車は独特の雰囲気があった。南部はイスラム教信者が多く、乗客の多くはイスラムの格好をしていて、マレーシアにでもいるような雰囲気である。乗客の多くはタイ南部へ夜行列車として利用する人たちであった。地域色が如実に出るタイの長距離列車も興味深い。そういえば日本でも急行「津軽」に乗車したとたん、津軽弁が行き交うなど列車に地域色があった時代が思い出される。

復路はナコンパトムから日本製ディーゼルカーでトンブリ駅へ戻った。運賃は40バーツ(約160円)である。

タイ国鉄 日本製ディーゼルカー
ナコンパトムからの帰路は日本製ディーゼルカーで(筆者撮影)

激安運賃で懐かしい風情の旅を

海外は物価高といわれるが、ことタイ国鉄の旅は激安運賃である。しかも多くの日本人鉄道ファンが楽しめるような車両が多いのも魅力である。乗車してストレスを感じるようなこともまったくない。

たとえば、日本では大手私鉄中心に都市鉄道は駅からゴミ箱が撤去され、不便に感じる観光客も多いのではないだろうか。タイ国鉄の客車も、設備としてはゴミ箱がないが、デッキ部分に黒い大きなゴミ袋が必ず幌の金具にくくられており、こうして利用者の便宜を図っている。タイ国鉄の車両は年代物であるが、何度でも利用したくなる鉄道に感じる。

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谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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