福縁伝授 福原義春著

福縁伝授 福原義春著

雑誌連載エッセーの単行本化、第3作である。好奇心、人の縁、礼節、自然への畏敬の念、と4章に分かれているが、話題は経済界きっての文化人・読書人らしく極めて多彩で、いずれも味わい深い。巻頭の「ゴルフをせざるの弁」と「言葉と文字」で展開される読書賛歌では、読書量の低下傾向と出版界の不振に歯止めがかからないことへの危機感がひしひしと伝わってくる。紹介されるフランスの読書推進策とその成果に学ばない手はないだろう。

「ライカの話」は永年にわたるカメラの趣味に裏付けられて厚みがあるし、「美術館論」は著者が館長として改革に成功した東京都写真美術館の経験を踏まえて説得力十分であり、「擬態」は生物学への好奇心なしには書きえない科学エッセーで非常に面白かった。そして掉尾、「文化の捻れ」は軽々には読みすごせない。戦後日本のリーダー不在と文化についての論考は大震災後の今、一段と重要な問題提起となっている。(純)

集英社 2300円

  

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自動車「コロナ不況」が促す<br>部品業界サバイバルの行方

コロナ危機の自動車部品メーカーへの影響は、過剰な設備と人員を抱えていた日産系でとくに深刻。比較的堅調だったトヨタ、ホンダ系も無傷ではありません。世界レベルでの技術開発競争は激化の一途で、生き残りへの再編と淘汰が始まろうとしています。