8割が捨てる余ったコスメを「絵の具」にする選択肢 青森ねぶた祭りの「山車」の着色にも使われた
家で余った自分のコスメを、キラキラした画材に変える。しかも、肌についても大丈夫なので、子どもにも安心して遊ばせられることがウケた。実際、創業から2年間は親子需要がプロダクト売り上げの55%を占めていたという。
その後、イベントが徐々に解禁されていくと、さまざまな催しからお呼びがかかるようになった。「サステイナブル、コスメ、地域、教育、画材などいろいろな切り口がある」(田中さん)ため、とにかく需要の間口が幅広く、行政、教育機関、百貨店、キッザニアなどとのコラボ企画が多数生まれた。
例えば、2022年10月に小田急百貨店町田店で実施されたコスメ下取りキャンペーンでは、回収したコスメを2023年2月のバレンタイン企画でメッセージカードの色材として加工し活用。さらに、同年のゴールデンウィークには、10月に回収したコスメを使った絵の具でオリジナルキーホルダーを作るワークショップを開催した。
メーカーとの交渉は難航
とはいえ、アートやホビークラフト系用途だけでは市場規模は小さい。使われなくなったコスメの有効活用を考えると需要の底上げが必要であり、汎用性のある技術への応用が急務だった。
「日本の化粧品メーカーは、法律や業界基準に加え、各社自社基準を設けて、地道に企業努力してプロダクトを生み出している。廃棄に対しても、開発、製造の過程で、極力ロスが出ないように最適化したうえで、それでも廃棄が出てしまう」(田中さん)ため、それらを活用したいと、起業直後からメーカーに話を持ちかけていた。
しかし、交渉は難航したという。理由はメーカーとしてわざわざ廃棄していることを世の中に知らしめる必要がないこと、何より、コスメには各社のノウハウが凝縮されているためだ。
「日本の化粧品メーカーの品質管理はすごい。メイクのはやりはどんどん移り変わるが、発色などはもちろんのこと、安全面を第一に考えて、安全性など担保されたものを世に出している。それが各社のノウハウだ。
廃棄するものとはいえ、機器を使って分析するとどのような成分や配合なのかわかる。容器に詰め替えると転売することも可能なため、廃棄予定の化粧品の中身(化粧品バルク)の譲渡についても慎重な姿勢だった」(田中さん)
そんな中、最初に賛同してくれたのが、大手化粧品メーカーのコーセーだ。そこから信頼と実績を重ね、現在は、化粧品メーカーやOEMメーカーなど12社と取り引きがあるという。
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